「自信作」が売れない本当の理由 その“強み”を決めるのはあなたではない 

3Dテレビは技術過信による失敗製品の一例 ビジネス切り口別
3Dテレビは技術過信による失敗製品の一例

高齢者住宅新聞連載 村田裕之の「シニアビジネス相談室」第102回

技術への過信が招く「自己満足」のプロダクト

本連載第81回で新規事業を企画する場合は「自社の強み」が何で、それをどう活用すれば市場で差異化できるかを徹底的に考えていく方が早道だ、とお話ししました。

しかし、一部企業のなかには「自社の強みだと経営者が思い込んでいるだけ」のケースも多々あるようです。

以前、ある老舗金物メーカーの社長が、シニアが使いやすく、安全な包丁を開発したので見てほしいと、私に送ってきたことがあります。「良い材質を使い、相当工夫を凝らした自信作」とのことでした。

実物を手に取ってみると、確かに安全に配慮してあり、使いやすそうでした。その一方で、すでに市場に数多ある競合品に対して、同じ価格帯でどれだけ差異化できるかは正直疑問でした。

技術を売りにしているメーカーは、往々にして自社技術を過信する傾向が強く、当該技術を使って製品化しても思っているほど売れないことがあります。

「自社の強み」とは「自社」ではなく「顧客」が決める

似たような例は、製品だけでなく、実はサービスの世界でも見られます。先日あるフレンチレストランでフルコースを注文した際、料理をサーブするごとに「材料はフランス産の△△で、〇〇のソースに××をアレンジして・・・」などとクドクド説明されて辟易。

さぞ希少な材料を使い、手の込んだ作り方をしていることをアピールしたかったのでしょう。長い説明が終わって、いざ食べると、肝心の料理は大したことがなく、値段だけが立派で愕然としました。

これらの事例で言いたいことは、「自社の強み」とは「自社」ではなく「顧客」が決める、ということです。これをはき違えると、単なる自己満足に陥り、機会損失を拡大します。

真のバロメーターはアンケートではなく「リピート」にある

顧客が製品・サービスを利用した後にアンケートを行う場合があります。しかし、この方法は実は顧客の真の評価が見えにくいのです。ネガティブ評価の場合、回答するのが面倒になり評価を得にくいためです。

自社の強みの明確なバロメーターは、顧客が製品・サービスを買う・リピーターになることです。

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この記事を書いた人
村田 裕之

村田アソシエイツ株式会社代表取締役、東北大学加齢医学研究所スマート・エイジングセンター特任教授

日本の中高年向け事業開発プロデューサー、起業家、社会学者。専門は中高年を対象とした事業開発と消費行動分析、日本と諸外国の高齢社会研究、スマート・エイジング論など。

1999年に日本で初めて「アクティブシニア市場」の重要性を指摘し、情報武装した高齢者「スマートシニア」の出現を予言した。2004年に「シニアビジネス」という言葉を初めて公に提唱し、女性専用フィットネス「カーブス」の日本への紹介、NTTドコモ「らくらくホン」の商品開発支援、関西大学とのカレッジリンク型シニア住宅の創成など、950以上の企業の事業開発に携わっている。日本におけるシニアビジネス分野の第一人者として知られている。

2006年に東北大学からの依頼でスマート・エイジングのコンセプトを提唱し、2009年10月東北大学スマート・エイジング国際共同研究センターの設立に参画。スマート・エイジング・カレッジを11年間主宰し、市民の健康リテラシーの向上とのべ406社との産学連携を推進してきた。

シンガポールに拠点を置く Asia Pacific Eldercare Innovation Awardsにより2018年5月に「Global Ageing Influencers」に、2024年5月に「Super Ageing Japan Outstanding Entrepreneur(スーパー・エイジング・ジャパン卓越起業家)」に選ばれた。

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