シニアビジネスの盲点:必要なのは「縦割りの専門性」より「横ぐしの解決力」

高齢者は足にトラブルを抱えている場合が多い ビジネス切り口別
高齢者は足にトラブルを抱えている場合が多い

高齢者住宅新聞連載 村田裕之の「シニアビジネス相談室」第103回

22年経っても変わらぬ「不」の現場

かつて拙著「シニアビジネス」で、モノ余りの時代には「商品シーズ型」より「顧客ニーズ型」のサービスが求められていくと述べました。

さらに今後想定される「顧客ニーズ型」事例として「睡眠不安解消サービス」を挙げていましたが、22年経過して、実際に世の中に数多く登場しました。

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一方で、シニアの需要の多い医療・介護関連分野は、未だ「商品シーズ」による縦割りが強く、シニアの「不(不便・不満)」が多いようです。

「専門家」をハシゴしても治らない痛み

埼玉県の佐藤博文さん(仮名、61歳)は、右足小指の付け根が痛んで困っていました。爪の右側の奥に突起物があり、最寄りの皮膚科で切除してもらいました。しかし、切除すると一旦痛みが減るものの、2週間するとまた痛むという繰り返しでした。

佐藤さんはネットで調べた結果、突起物の原因は靴の形が右足小指の形に合っていないためと知り、中敷き専門店を訪れ、補正用の中敷きを作成しました。

さらに、フィット感を良くするために、シューフィッターがいる靴屋に行き、8台のカメラで足の形を計測し、最適な靴を購入しました。

ところが、肝心の右足小指の痛みが治りません。佐藤さんはフットケア専門家に診てもらったところ、「突起物は内反小趾(ないはんしょうし)が原因で、解決にはテーピング施術が有効では」と助言されました。佐藤さんは、内反小趾という病名をここで初めて知りました。

その後、テーピング業者で数か月施術を受け、ようやく小指の痛みがなくなりました。しかし、ここまでたどり着くのに大変な手間と費用がかかりました。

足りないのは「商品」ではなく「連携」

この例では、皮膚科は患部を切除する、靴屋は最適の靴を提供する、中敷き店は最適の中敷きを提供する、という風に各々が「最適と考える」サービスを提供しています。ところが、残念なことに誰も顧客のニーズに応えていないのです。

こうした商品シーズを「縦割り」でなく、「横ぐし」で提供し、顧客の不を解消する「顧客ニーズ型」のサービスこそが求められているのです。

この記事を書いた人
村田 裕之

村田アソシエイツ株式会社代表取締役、東北大学加齢医学研究所スマート・エイジングセンター特任教授

日本の中高年向け事業開発プロデューサー、起業家、社会学者。専門は中高年を対象とした事業開発と消費行動分析、日本と諸外国の高齢社会研究、スマート・エイジング論など。

1999年に日本で初めて「アクティブシニア市場」の重要性を指摘し、情報武装した高齢者「スマートシニア」の出現を予言した。2004年に「シニアビジネス」という言葉を初めて公に提唱し、女性専用フィットネス「カーブス」の日本への紹介、NTTドコモ「らくらくホン」の商品開発支援、関西大学とのカレッジリンク型シニア住宅の創成など、950以上の企業の事業開発に携わっている。日本におけるシニアビジネス分野の第一人者として知られている。

2006年に東北大学からの依頼でスマート・エイジングのコンセプトを提唱し、2009年10月東北大学スマート・エイジング国際共同研究センターの設立に参画。スマート・エイジング・カレッジを11年間主宰し、市民の健康リテラシーの向上とのべ406社との産学連携を推進してきた。

シンガポールに拠点を置く Asia Pacific Eldercare Innovation Awardsにより2018年5月に「Global Ageing Influencers」に、2024年5月に「Super Ageing Japan Outstanding Entrepreneur(スーパー・エイジング・ジャパン卓越起業家)」に選ばれた。

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