地域での新規事業のカギは都市部から見た強みを探すこと

究極の地元資源、おばあちゃんが主役の小川の庄のおやき作り ビジネス切り口別
究極の地元資源、おばあちゃんが主役の小川の庄のおやき作り

高齢者住宅新聞連載 村田裕之の「シニアビジネス相談室」第82回

何もないように見える過疎地でいかにして新規事業を生み出すか

新規事業を成功させる人は、それまでの通説や一般常識にとらわれず、独自の差異化を実行する人です。

そして、独自の差異化は、その会社や地域の資源を強みに変えることで成し遂げている例が多いのです。

長野市の西に隣接する人口2200人強の過疎地、小川村にある株式会社小川の庄では、創業者の権田市郎氏が食品加工会社で得た生産技術で、それまで単なる郷土食だった「おやき」を商品化しました。

権田氏の販売経験・人脈を活かして販路を広げ、現在では全国の百貨店やスーパーで売られるようになりました。

私も実際に小川村に行ったことがありますが、山間の傾斜の多い場所で、お世辞にも耕作に恵まれているとは言えない土地です。

逆境こそ知恵の泉 地域で使えそうなものは何でも活用する

しかし、必要は発明の母、逆境こそが知恵を生みます。こうした傾斜地でも栽培できる麦や雑穀を皮の原料とし、条件の悪い耕作地でも育つ野沢菜や山菜を具にしたのが、実はおやきなのです。

またこの辺りに多い広葉樹は、おやきを焼くための燃料に使いました。

おやきは、本来家で食べるもので、おのおの家で製法が異なり、そのノウハウは全て家の女性、つまりおばあちゃんたちが持っていました

ところが、彼女たちは過疎の村で、やることもなく、低収入にあえいでいました。彼女たちが働きやすい環境を整備すれば、雇用創出になり、一挙両得です。

そう考えた権田氏は「究極の地元資源」のおばあちゃんたちをおやき作りの主役にして事業を組み立てたのです。

地方発シニアビジネス成功事例の共通点は地域資源を事業の強みに変えていること

成功する地方発シニアビジネスの共通点は、地域の資源を徹底的に活用して、事業の強みに変えていることです。

実は、こうした強みは、地域の当事者自身が気付いていないことが案外多いのです。しかし、地域の強みとは、実は当事者以外の外部者から強みに見えることなのです。

「地方は田舎で、人も少なく、強みが何もない」と考えるのではなく、大きな市場のある都市部から見て、何が強みに見えるのかを探し出すことが重要なのです。

この記事を書いた人
村田 裕之

村田アソシエイツ株式会社代表取締役、東北大学加齢医学研究所スマート・エイジングセンター特任教授、シンクタンク・ソフィアバンク アソシエイツ、エイジング・アジア国際アドバイザー、シンガポール工科デザイン大学 国際アドバイザー。

日本の中高年向け事業開発プロデューサー、起業家、社会学者。専門は中高年を対象とした事業開発と消費行動分析、日本と諸外国の高齢社会研究、スマート・エイジング論など。

1999年に日本で初めて「アクティブシニア市場」の重要性を指摘し、情報武装した高齢者「スマートシニア」の出現を予言した。2004年に「シニアビジネス」という言葉を初めて公に提唱し、女性専用フィットネス「カーブス」の日本への紹介、NTTドコモ「らくらくホン」の商品開発支援、関西大学とのカレッジリンク型シニア住宅の創成など、950以上の企業の事業開発に携わっている。日本におけるシニアビジネス分野の第一人者として知られている。

2006年に東北大学からの依頼でスマート・エイジングのコンセプトを提唱し、2009年10月東北大学スマート・エイジング国際共同研究センターの設立に参画。スマート・エイジング・カレッジを11年間主宰し、市民の健康リテラシーの向上とのべ406社との産学連携を推進してきた。

2004年に世界最大の高齢者NPO AARPがロンドンで開催した国際会議に、唯一の日本人パネリストとして招聘されて以来、スイスでの世界エイジング・世代問題会議にチェアマンとして招聘、シンガポール政府主催SICEX2008の基調講演者に招聘されるなど多くの国際的な活動に取り組んでいる。

シンガポールに拠点を置く Asia Pacific Eldercare Innovation Awardsにより2018年5月に「GLOBAL AGEING INFLUENCERS」に、2024年5月に「Super Ageing Japan Outstanding Entrepreneur(スーパー・エイジング・ジャパン卓越起業家)」に選ばれた。

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