なぜ、野球場や海辺で飲むビールは一段と美味いのか?

アマルフィデラセーラから見える景観 ビジネス切り口別
アマルフィデラセーラから見える景観

2021年の米大リーグオールスターゲームは大谷翔平の出場で大きな話題を集めた。

開催地の「クアーズ・フィールド」は日本にはない圧倒的なスケール感のある球場だ。

私も12年以上前に訪れたことがあるが、ここで野球観戦しながら飲むビール「クアーズ(Coors)」は本当に美味しく試合が盛り上がるにつれ何杯も飲んだ記憶がある。

ところが、このクアーズを家で飲むと全く美味くない。クアーズ・フィールドで飲んだものとは別物のように感じてしまう。

そういえば、20代にバッグパッカーをやっていた頃、フィリピンの島の浜辺で現地のビール「サンミゲル」を飲むと最高に美味かったことを思い出した。

小瓶が一本、1980年代当時の価格は50円位でミネラルウォーターより安く、水代わりに飲んでいた。ところが、帰国後に酒屋でサンミゲルを見つけて、飲んでみると全然美味くなかった。

こうした味の違いが生じる原因は、美味しいと感じる理由を、ビールそのものでなく「ビール以外のこと」に感じているためと考えられる。

「ワクワク感」を、その時に飲むビールや食べ物の「満足感」と勘違いしている

実は、野球観戦時にビールが美味しいのは、野球観戦時の「ワクワク感」を、その時に飲むビールや食べ物の「満足感」と勘違いしているためだ。

屋外で行うバーベキューや芋煮会などで食べるものが美味しく感じるのは、屋外環境の「開放感」と、大勢の人たちとワイワイ話しながら食べる「楽しさ」が美味しさとして感じられるためだ。

さらに『今日くらいは贅沢してもよい』という「自分へのご褒美感」や、『今日は普段しないことをしてもよい』という「気分の解放感」など様々な要素が加わって、一層おいしく感じるようになる。

こうした現象を心理学で「感情ヒューリスティック」と言う。これは、人が「感情的な要素」で判断してしまい、そこに付随するメリットやリスクも感情によって判断してしまう傾向を意味する。

「感情ヒューリスティック」は、いろいろな付加価値向上策に応用できる

逆にこれを用いると、いろいろな付加価値向上策に応用できる。

鎌倉市にある「アマルフィ デラセーラ」は、江ノ島を望み、七里ガ浜の海岸が目の前に広がる小高い丘の上の開放的なテラスのレストランだ。アマルフィ海岸で有名なイタリアの地名を名称にして、解放感をイメージさせている。

価格がリーズナブルなため、料理の質はそれ程高級ではないと思うが、レストランから一望できる「景観」や「場のしつらえ」のせいで、実物以上に美味しく感じさせている

ここなどは典型的な「感情ヒューリスティック」の応用例と言えよう。

この記事を書いた人
村田 裕之

村田アソシエイツ株式会社代表取締役、東北大学加齢医学研究所スマート・エイジングセンター特任教授

日本の中高年向け事業開発プロデューサー、起業家、社会学者。専門は中高年を対象とした事業開発と消費行動分析、日本と諸外国の高齢社会研究、スマート・エイジング論など。

1999年に日本で初めて「アクティブシニア市場」の重要性を指摘し、情報武装した高齢者「スマートシニア」の出現を予言した。2004年に「シニアビジネス」という言葉を初めて公に提唱し、女性専用フィットネス「カーブス」の日本への紹介、NTTドコモ「らくらくホン」の商品開発支援、関西大学とのカレッジリンク型シニア住宅の創成など、950以上の企業の事業開発に携わっている。日本におけるシニアビジネス分野の第一人者として知られている。

2006年に東北大学からの依頼でスマート・エイジングのコンセプトを提唱し、2009年10月東北大学スマート・エイジング国際共同研究センターの設立に参画。スマート・エイジング・カレッジを11年間主宰し、市民の健康リテラシーの向上とのべ406社との産学連携を推進してきた。

シンガポールに拠点を置く Asia Pacific Eldercare Innovation Awardsにより2018年5月に「Global Ageing Influencers」に、2024年5月に「Super Ageing Japan Outstanding Entrepreneur(スーパー・エイジング・ジャパン卓越起業家)」に選ばれた。

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