高齢者住宅新聞連載 村田裕之の「シニアビジネス相談室」第106回
インフレに直面するシニアとデジタル金融弱者の現実
多くのシニアにとって、いま最大の不安は物価高(インフレ)でしょう。テレビでは年金暮らしのシニアが物価高にあえぐ姿が頻繁に報道されています。これらの人の多くは、本連載第101回で触れた「デジタル金融弱者」と思われます。
仮に、彼らが資産運用によって年金以外の収入を得られ、現預金の目減りを防ぐ等のインフレ対策ができると知れば、利用したいと思うでしょう。しかし、現状の課題は、彼らを対象にした適切な支援サービスが存在しないことです。
デジタル金融弱者の共通の特徴として、▽パソコンを使わない、または操作が苦手▽スマホは使えるが金融サービスの利用は少ない▽金融資産は現預金が大半▽投資経験はなく、投資は危ないと思っている――が挙げられます。
「操作教習」と「資産運用」の間にそびえる法律とコストの壁
こうした特徴を持つ人たちが自分でインフレ対策を行うには、(1)パソコンやスマホでネット証券・銀行を使える(2)必要かつ適切な情報をネットで探し出せる(3)保有金融資産を年4%程度で運用できる(インフレ率は政府・日銀目標値2%を前提)――能力が必要でしょう。
(1)と(2)のための指南は、パソコン・スマホ教室で可能です。これらの教室でネット証券・銀行の使い方の教習は、「操作方法に徹する」のであれば法的に問題ありません。
しかし、(3)のための指南は、いわゆる金融商品取引法(金商法)の領域のため、パソコン・スマホ教室では不可能です。逆に銀行や証券会社が(1)と(2)のための指南を行うには、多くの手間とコストがかかりそうです。このようにデジタル金融弱者支援には多くの壁が存在します。
キャリア×銀行の連携が拓く「デジタル金融弱者」救済の可能性
ところが、今年8月3日から開始する「ドコモSMTBネット銀行」(通称「ドコモの銀行」)がこの壁を壊しそうです。
従来NTTドコモは、店舗でシニア向けスマホ教室を多数実施しており、ドコモの銀行が資産運用サービスを提供すれば、(1)から(3)まで一貫して提供できます。
しかも、ドコモの銀行は、既存のドコモ店舗を金融サービスの相談窓口接点とすることを基軸に置くとのこと。これは他の携帯キャリアによる銀行(auじぶん銀行、楽天銀行など)と異なる戦略です。
また、大手メガバンクは、店舗をどんどん統廃合して顧客とのリアル接点を縮小しており、これと逆の戦略でもあります。
携帯キャリアによる銀行のM&Aが、デジタル金融弱者の「不の解消」の切り札になる可能性があり、今後の展開に注目です。
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