家族が困る「デジタル資産」放置の3大リスクと今すぐできる対策

デジタル資産リストの例 ビジネス切り口別
デジタル資産リストの例 出典:村田アソシエイツ

シルバー産業新聞 連載「半歩先の団塊・シニアビジネス」第231回 

最も見落とされがちで深刻なトラブルを招く「デジタル資産」

資産と言うと、現金や不動産、紙の有価証券などを思い浮かべる方が多いかもしれない。しかし、現代の資産管理において、最も見落とされがちで、かつ深刻なトラブルを招くのが「デジタル資産」だ。

今回から2回に分けて、デジタル資産が放置される場合のリスクと、「もしもの場合」を想定した対策を解説したい。

デジタル資産とは何か

デジタル資産とは、インターネット上やパソコン、スマートフォンの中に電子データとして存在し、経済的価値や固有の価値を持つ無形資産のことを言う。

具体的には、ネット銀行の預金、ネット証券で扱っている有価証券、暗号資産、電子マネー、NFT、SNSアカウント、Webサイト、写真・動画などの電子データが該当する。

ネット銀行や暗号資産では、通帳や証書といった「形」が残らない。また、ネット証券での取引報告書などは、ほとんどの場合に電子交付のため、ダウンロードしても印刷しない限り、あなたのパソコンの中に保存されたままだ。

また、サブスク料金や公共料金などは、定期的にクレジットカード決済や銀行口座引落としで支払われている。

現代の資産管理の大部分は「紙」ではなく、「デジタル情報」で行われていることが改めてわかる。

デジタル資産が放置された場合の「3つのリスク」

もし、デジタル資産の情報を家族等に共有せずにあなたが亡くなり、デジタル資産が放置された場合、主に次の3つのリスクが考えられる。

1.相続財産(遺産)の機会損失リスク

相続人である家族がネット銀行やネット証券の存在に一生気がつかず、本来得られるはずの相続財産を得られないリスク。放置されている間に被相続人が保有していた株式の株価が暴落し、資産価値を失うリスクもある。

2.不必要な課金継続による損失リスク

サービスを利用していないのに、サブスクなどの有料サービスの自動引き落としが続き、銀行口座残高が減るリスク。

3.ネットアカウントの乗っ取りと悪用リスク

放置されたSNSやブログのアカウントが乗っ取られて悪用されるリスク。悪用されて被害が発生しても、アカウント保有者が不在なので対応できない。

これら1から3のリスクを最小化するために、できるだけ早期の対策が望ましい。

今日からできるデジタル資産対策

デジタル資産対策のポイントは、仮にあなたが亡くなった場合に「家族が必要なアクションを取れるようにしておく」ことだ。

まず必要な作業は、資産の「存りか」を可視化する(デジタル資産リストを作成する)ことだ。エクセルなどのスプレッドシートを利用して、次の(1)から(3)の分類でデジタル資産リストを作成してみよう。

(1)金銭的価値があるもの

ネット銀行、ネット証券(株式、投資信託、債券、暗号資産など)、電子マネー、マイレージ、ポイントなど。

(2)継続課金されるもの

サブスク(有料アプリ、パソコンセキュリティ、動画配信など)、公共料金、新聞購読料、クレジットカード年会費、スマホの割賦代金など。

(3)個人情報に関わるもの

写真・動画・文書データ、SNSアカウント、ブログアカウント、メールアカウントなど。

表にデジタル資産リストの参考例を示す。こうして一覧表に整理してみると、自分で思っていた以上に対象があることに気が付くだろう

注意点は、IDやパスワード等のログインに必要な情報は、このリストには書かないことだ。「どこの、どんなサービスを使っているか」だけがわかるリストにすることが重要だ。

このリストを継承したい人(家族など相続人等)に事前に渡しておくだけで、残された人の事務的負担がかなり減るはずだ。

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この記事を書いた人
村田 裕之

村田アソシエイツ株式会社代表取締役、東北大学加齢医学研究所スマート・エイジングセンター特任教授

日本の中高年向け事業開発プロデューサー、起業家、社会学者。専門は中高年を対象とした事業開発と消費行動分析、日本と諸外国の高齢社会研究、スマート・エイジング論など。

1999年に日本で初めて「アクティブシニア市場」の重要性を指摘し、情報武装した高齢者「スマートシニア」の出現を予言した。2004年に「シニアビジネス」という言葉を初めて公に提唱し、女性専用フィットネス「カーブス」の日本への紹介、NTTドコモ「らくらくホン」の商品開発支援、関西大学とのカレッジリンク型シニア住宅の創成など、950以上の企業の事業開発に携わっている。日本におけるシニアビジネス分野の第一人者として知られている。

2006年に東北大学からの依頼でスマート・エイジングのコンセプトを提唱し、2009年10月東北大学スマート・エイジング国際共同研究センターの設立に参画。スマート・エイジング・カレッジを11年間主宰し、市民の健康リテラシーの向上とのべ406社との産学連携を推進してきた。

シンガポールに拠点を置く Asia Pacific Eldercare Innovation Awardsにより2018年5月に「Global Ageing Influencers」に、2024年5月に「Super Ageing Japan Outstanding Entrepreneur(スーパー・エイジング・ジャパン卓越起業家)」に選ばれた。

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