2024年3月22日 日経MJ連載 納得!シニア消費
年金不安でシニア層に注目される「リバースモーゲージ」
年金生活の不安を訴えるシニアが目立っている。年金だけでは生活費が不足、貯えも十分ではない人が多いからだ。
こうした状況で注目されているのが「リバースモーゲージ」。自宅を担保にお金を借りるローン商品だ。契約者は生きている間に自宅を退去する必要はなく、死亡時に自宅を売却して返済に充てる。
今回取り上げる東京スター銀行の「充実人生」は、利用者数累計が1万4155人(22年7月現在)にのぼる。利用者は全て60歳以上。契約時の平均年齢は72歳前後だ。リバースモーゲージをどう活用して不安を解消しているのかを見てみよう。
活用その1:医療・介護費用などへの備え
1つ目は、医療・介護費用などへの備えだ。愛知県の木村浩さん(仮名、79歳)は「健康に不安があるので、いざと言う時に使えるお金がある安心感は大きい」と言う。
一般に60歳以上の世帯は、持ち家率が90%を超えるなど資産は大きいが、主な収入は年金の場合が目立つ。年金や仕事以外で生活資金を得られる点が受けている。
活用その2:利用中のローンを借り換えて毎月の返済額を減らす
2つ目は、利用中のローンを借り換えて毎月の返済額を減らすこと。大阪府の東谷啓介さん(66歳、男性)は「毎月のローン返済額が減り、不安が無くなったので安心して仕事に専念できるようになった」と言う。
住宅ローンの場合、元金と利息を毎月返済する。一方、リバースモーゲージでは利息のみ。これが日々の生活に安心感を提供する点が支持されている。
活用その3:自宅のリフォーム資金に活用する
3つ目は、自宅のリフォーム資金に活用することだ。神奈川県の田中聡さん(仮名、65歳)は「老後のために備えたお金を使わず、リバースモーゲージで資金を捻出し、古かった家をリフォームしたことで新築みたいになったのがうれしい」と言う。
ただ、リバースモーゲージは打ち出の小槌ではない。商品の性質上、担保となる自宅の評価額が借入残高より低くなる担保割れのリスクがあるからだ。
リスク管理のカギは、長年の経験で培われる物件審査能力
リスクを管理する上で重要になるのは、担保となる物件を審査する組織的能力だ。売却時に担保価値や市場性が維持できる物件か、売却時に問題が起きないか、などを見極める能力が必要だ。これらは、長年にわたって様々な物件を扱ってきた「経験」によって培われる。
東京スター銀行のリバースモーゲージ「充実人生」にはそうした経験に基づく特徴がある。例えば、融資額が300万円からでも対応するなど比較的少額でも可能だ。他行だと最低1千万円以上が多い。対象地域が広く、マンションも融資対象となる。さらに、資金の使い道が自由で事業用と投資用でなければ制限されない。
子供には負担をかけず、自分のことは自分で面倒見る時代になってきたようだ。自宅を子供には相続させずにリバースモーゲージを利用すれば、老後の不安解消の一助になりそうだ。