多くの人が避けている社会的課題に真正面から取り組むと、オンリーワンの事業になる

R65の電力データによる高齢入居者見守りの仕組み ビジネス切り口別
R65の電力データによる高齢入居者見守りの仕組み

高齢者住宅新聞連載 村田裕之の「シニアビジネス相談室」第88回

多くの人が避けている分野には競合他社が少ない

シニア事業の成功確率を上げる手段の一つは、多くの人が避けている社会的課題に取り組むことです。なぜなら、こうした課題に取り組む企業は一般に少なく、差異化しやすいためです。この良い例が、高齢者向け賃貸情報サイト「R65不動産」を運営するR65です。

高齢者になると直面する「不(不安・不満・不便))」の1つは、賃貸住宅(サ高住を除く)を借りにくいことです。高齢者が入居可能な賃貸住宅は市場全体の5%と言われています。

高齢者向け賃貸住宅の最大のリスクは孤独死

高齢者が賃貸住宅を借りにくい理由は、住宅を貸す側の大家が高齢者に多くのリスクを感じて貸し渋るからです。

主なリスクは、孤独死、認知症、家賃滞納など。特に孤独死が起きると、原状回復に高額な費用がかかり、物件価値も低下します。

こうした事情から不動産業者も高齢者への仲介には及び腰です。高齢者が求める条件の物件が少なく、手間がかかる割に収益は低く、入居後の管理も面倒と思っているためです。

電力データを利用した見守りの仕組みを開発

そこでR65は電力データを利用した見守りの仕組みを大手電力会社らが設立したGDBLと共同開発しました。住宅入居者の電力使用量パターンを常時AI(人工知能)で分析し、通常と異なる場合、家族や管理会社などにメールで通知します。

スマートメーターを活用するため、追加設備が不要で大家への経済的負担はなし。センサーなどを部屋に設置する必要もなく、入居者は監視されている感じがしません。

これらのメリットにより、孤独死のリスクを下げ、仮に孤独死が起きた場合でも早期発見が可能となり、物件価値の低下を最小限に抑えられます。さらに、孤独死の場合の原状回復費や空室になった場合の家賃を補償する保険も用意しています。

こうした工夫の結果、現在同社のホームページでは、首都圏だけでなく全国の約3,000~5,000件の物件を扱うようになっています。

このように、多くの人が避けている社会的課題に真正面から取り組むと、オンリーワンの事業となり、社会的注目も浴びやすくなります。

この記事を書いた人
村田 裕之

村田アソシエイツ株式会社代表取締役、東北大学加齢医学研究所スマート・エイジングセンター特任教授

日本の中高年向け事業開発プロデューサー、起業家、社会学者。専門は中高年を対象とした事業開発と消費行動分析、日本と諸外国の高齢社会研究、スマート・エイジング論など。

1999年に日本で初めて「アクティブシニア市場」の重要性を指摘し、情報武装した高齢者「スマートシニア」の出現を予言した。2004年に「シニアビジネス」という言葉を初めて公に提唱し、女性専用フィットネス「カーブス」の日本への紹介、NTTドコモ「らくらくホン」の商品開発支援、関西大学とのカレッジリンク型シニア住宅の創成など、950以上の企業の事業開発に携わっている。日本におけるシニアビジネス分野の第一人者として知られている。

2006年に東北大学からの依頼でスマート・エイジングのコンセプトを提唱し、2009年10月東北大学スマート・エイジング国際共同研究センターの設立に参画。スマート・エイジング・カレッジを11年間主宰し、市民の健康リテラシーの向上とのべ406社との産学連携を推進してきた。

シンガポールに拠点を置く Asia Pacific Eldercare Innovation Awardsにより2018年5月に「Global Ageing Influencers」に、2024年5月に「Super Ageing Japan Outstanding Entrepreneur(スーパー・エイジング・ジャパン卓越起業家)」に選ばれた。

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