シニア向け新規事業成功のカギ キラーコンテンツの条件は?

富士山は代表的な日本のキラーコンテンツ ビジネス切り口別
富士山は代表的な日本のキラーコンテンツ

高齢者住宅新聞連載 村田裕之の「シニアビジネス相談室」第87回

低い山が100あるより、特徴ある山が1つあることが重要

シニア向け新規事業の成功要因の一つは「キラーコンテンツ」があるかどうかです。

これに関して、つぎのような質問を受けることがあります。

「広範囲に多くのサービスを提供すること自体がキラーコンテンツにならないか。3,000メートル級の山はないが、1,000 メートル級の多くの山をまとめて持っていることで差異化にならないか」

私の答えは「残念ながら差異化にはならない」です。

これまで何度か触れてきましたが、あれもこれもかき集めたサービスの元コンテンツは、たいてい他社製のものです。

こうした構造だと一定時間は差異化できますが、そう遠くないうちに競合他社に真似されます。すると「多くのメニューを取り揃えていること」という部分がなくなってしまい、徐々に競争力が下がり、売れなくなります。

実は大手企業が取り組むシニア向け会員制サービスでは、未だにあれもこれもとメニューを揃えたがる傾向があります。

ワンストップサービスはキラーコンテンツにならないか?

また、次の質問を受けることもあります。

「多くのサービスが1ヵ所にあるワンストップサービスはキラーコンテンツにならないか」

これについても、単に多くのサービスが1ヵ所にあるからと言ってワンストップサービスになるのではありません

競争力の高いサービスが複数あることで顧客価値が高くなった結果、「まず、あそこに行ってみよう」というポジションとなり、ワンストップサービスになるのです。

さらに、困ったら行く駆け込み寺のような信頼感があることもワンストップになるための条件です。

低い山が100あるより、1つでいいので他社が真似できない顧客価値の高い山があった方がいいのです。

例えば、富士山は日本一標高が高いだけでなく、その形状の美しさや影響力の大きさもほかに例がありません。それゆえ、日本が誇るキラーコンテンツなのです。

キラーコンテンツを持つとは、差異化可能時間を伸ばす戦略を取ること

情報化の進展で、ひと昔に比べて真似がしやすい環境になったため、商品・サービスの「差異化可能時間」が短くなっています。

キラーコンテンツを持つとは、この時間をできるだけ長くするための「重層構造的」な戦略を取り続けることなのです。

これは判りやすく言えば、一の矢、二の矢、三の矢、四の矢・・・と打ち手を用意するとともに、それぞれの打ち手が相乗効果を出し合うような構造とすることです。

参考:キラーコンテンツで競合他社と差異化を図る

こうした戦略なしで事業を始めたため、販促に金をかけても客が集まらない・商材が売れない、赤字が拡大する、など計画通りに行かず、事業が頓挫する例が後を絶ちません。

シニア向け新規事業で失敗しないためには、事業計画策定段階でキラーコンテンツを含む事業の差異化戦略を十分に練ることが重要です。

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この記事を書いた人
村田 裕之

村田アソシエイツ株式会社代表取締役、東北大学加齢医学研究所スマート・エイジングセンター特任教授

日本の中高年向け事業開発プロデューサー、起業家、社会学者。専門は中高年を対象とした事業開発と消費行動分析、日本と諸外国の高齢社会研究、スマート・エイジング論など。

1999年に日本で初めて「アクティブシニア市場」の重要性を指摘し、情報武装した高齢者「スマートシニア」の出現を予言した。2004年に「シニアビジネス」という言葉を初めて公に提唱し、女性専用フィットネス「カーブス」の日本への紹介、NTTドコモ「らくらくホン」の商品開発支援、関西大学とのカレッジリンク型シニア住宅の創成など、950以上の企業の事業開発に携わっている。日本におけるシニアビジネス分野の第一人者として知られている。

2006年に東北大学からの依頼でスマート・エイジングのコンセプトを提唱し、2009年10月東北大学スマート・エイジング国際共同研究センターの設立に参画。スマート・エイジング・カレッジを11年間主宰し、市民の健康リテラシーの向上とのべ406社との産学連携を推進してきた。

シンガポールに拠点を置く Asia Pacific Eldercare Innovation Awardsにより2018年5月に「Global Ageing Influencers」に、2024年5月に「Super Ageing Japan Outstanding Entrepreneur(スーパー・エイジング・ジャパン卓越起業家)」に選ばれた。

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