高齢者住宅新聞連載 村田裕之の「シニアビジネス相談室」第5回
紙アンケートの自由記入欄は宝の山!回答促す工夫を
シニア向けにネットで調査する場合の注意点は三つあります。第一にアナログ情報が欠落する点、第二に入力インターフェイスが障害になりやすい点、第三に母集団にバイアスがかかりやすい点です。
第一の点:紙アンケートの場合、情報価値が高いのが自由記入欄における手書きのコメントです。理由は、字の濃淡や記入の仕方、筆跡といった情報が含まれることです。これらの情報から回答者がコメントを書いている時の心境や雰囲気が伝わってくるので、書いてある文字情報以上の情報が得られます。
これに対し、インターネットのアンケート回答には、こうしたアナログ情報は一切含まれません。実はこうした自由記入欄の手書き情報にこそ、回答者の本音が最も透けて見えるところなのです。
65歳以上対象のネットアンケートは入力の敷居が高くなる
第二の点:数年前に比べて現在は、65歳以上のネットユーザーの割合はかなり増えました。ところが、65歳以上の人では、キーボードでの入力より手書きを好む人の割合は依然として多いのです。
この理由は、一昔前に比べてかなり改善されたとはいえ、パソコンの使い勝手やキーボードでの入力インターフェイスが、まだまだ使いにくいことにあります。このため、年配者では自由コメント欄での入力が面倒になり、それゆえ回答の確率が低下する傾向があります。
謝礼が目的の母集団は回答の信憑性が低くなる
第三の点:ネットアンケートを多用している調査会社では、回答者の属性を明らかにするために、会員プロファイルを登録しています。そして、調査テーマ毎に参加を呼びかけ、回答者に謝礼を支払うことで、母集団を確保します。
ところが、こうした手法だと母集団にバイアスがかかります。一つは、調査テーマによって、母集団の数が少なく、もはや統計学上の「大数の法則」を前提とした調査ではなくなることです。
もう一つは、会員登録者には、回答謝礼が動機となっている人が多いため、回答の信憑性が低いことです。また、ネット調査の母集団には、キーボード入力やパソコン利用に抵抗の少ない人が多く、これも母集団にバイアスがかかることを意味します。