ジェネレーション・マーケティングの落とし穴

ビジネス切り口別
ある百貨店売場での光景

高齢者住宅新聞連載 村田裕之の「シニアビジネス相談室」第40回

「世代マーケティング」の基本は「世代原体験」

以前、異なる世代特有の嗜好性と消費行動との関係を説明しました。その際に重要なのは「世代原体験」が消費行動に影響を及ぼすことです。

これは、ターゲット顧客の世代が幼少期からおおよそ20歳頃までに共通に体験する文化の体験です。食生活、文学、音楽、映画、漫画、テレビ番組、ファッション、スポーツなどさまざまあります。

20歳頃までの体験が世代原体験になる理由は、脳の器質的な発達時期が20歳頃までであることに関係します。

20歳以前の「世代原体験」が中高年期の消費行動に影響する

重要なのは、この世代原体験が中高年期の消費行動に影響を与えることがあり、以前紹介した40代以降に見られる「ノスタルジー消費」、50代以降に見られる「自己復活消費」や「夢実現消費」などがあります。

一方、ターゲット顧客が例えば団塊世代だからと言って、世代原体験の一つであるカレッジフォークやビートルズという切り口だけで何かが売れるとは限りません。

以前、関西のある百貨店で、団塊世代を狙ったと思われる衣料品売り場がありました。そこにはビートルズの赤盤(赤い色の45回転ドーナツ盤アナログレコード)が多数飾ってありました。しかし、同じ売り場で売っている衣料品との関係性がまったくなく、正直「それで??」という感じでした。

「昭和の懐かしさ」は「昭和の原体験」がない人には懐かしくない

また、かつて一時期、「団塊パンチ」なる雑誌が発刊されたことがありますが、これは70年代に流行った雑誌「平凡パンチ」のリバイバルでした。これも団塊世代のノスタルジー消費狙いでしたが、長続きしませんでした。

これまで何度も説明の通り、シニアの消費はシニア特有の「変化」で決まるのです。世代原体験が明確に存在する場合、中高年期に起きる個人や家族のライフステージの変化によって消費が生まれるのです。

世代特有の嗜好性はマーケッターであるならば、当然知っておくべきことです。しかし、そうした知識だけでの安直なジェネレーション・マーケティングは機能しないと心得た方が良いでしょう。

この記事を書いた人
村田 裕之

村田アソシエイツ株式会社代表取締役、東北大学加齢医学研究所スマート・エイジングセンター特任教授

日本の中高年向け事業開発プロデューサー、起業家、社会学者。専門は中高年を対象とした事業開発と消費行動分析、日本と諸外国の高齢社会研究、スマート・エイジング論など。

1999年に日本で初めて「アクティブシニア市場」の重要性を指摘し、情報武装した高齢者「スマートシニア」の出現を予言した。2004年に「シニアビジネス」という言葉を初めて公に提唱し、女性専用フィットネス「カーブス」の日本への紹介、NTTドコモ「らくらくホン」の商品開発支援、関西大学とのカレッジリンク型シニア住宅の創成など、950以上の企業の事業開発に携わっている。日本におけるシニアビジネス分野の第一人者として知られている。

2006年に東北大学からの依頼でスマート・エイジングのコンセプトを提唱し、2009年10月東北大学スマート・エイジング国際共同研究センターの設立に参画。スマート・エイジング・カレッジを11年間主宰し、市民の健康リテラシーの向上とのべ406社との産学連携を推進してきた。

シンガポールに拠点を置く Asia Pacific Eldercare Innovation Awardsにより2018年5月に「Global Ageing Influencers」に、2024年5月に「Super Ageing Japan Outstanding Entrepreneur(スーパー・エイジング・ジャパン卓越起業家)」に選ばれた。

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