減塩食で血圧が下がるとは限らない

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減塩食が花盛りだが・・・

高齢者住宅新聞連載 村田裕之の「シニアビジネス相談室」第37回

減塩食が本当に高血圧対策になっているのかは疑問

高血圧は心血管病の最大の危険因子で、これに起因する死亡者数は年間約10万人と推定されています。こうした背景の下、高血圧で悩む高齢者を対象にした「減塩食」が花盛りです。しかし、そもそもこうした減塩食が本当に高齢者の高血圧対策になっているのかは疑問です。

高血圧症の90%以上は、明確な原因が特定できない「本態性高血圧症」と呼ばれるものです。これは塩分だけでなく、多くの因子が絡み合って発症する「多因子疾患」と考えられています。

この症状の人は「食塩感受性」と「食塩非感受性」の二つのグループに分けられます。食塩感受性の人は食塩の摂取で血圧が上昇しやすく、減塩で速やかに血圧が下がります。

減塩食を食べても高血圧症の改善が期待できない人は多い

一方、食塩非感受性の人は食塩を多く取っても血圧上昇は軽度です。ということは、減塩してもほとんど反応しないのです。

近年の研究で、この食塩感受性は特定の遺伝子で規定されることがわかってきました。実は食塩感受性の遺伝子を持つ人は日本人全体の二割程度と言われています。

ということは、減塩食を食べても高血圧症の改善が期待できない人がかなり多いことになります。

高血圧症だから一律に減塩食を強制的に食べさせられるのは古い

東北大学の山本雅之教授によれば、採血による遺伝子診断で食塩感受性の有無は容易に鑑別され、個々の症例に応じた、より的確な治療・予防が近いうちに可能になるとのことです。

例えば、ある人が食塩感受性遺伝子を持つことがわかれば、1日5グラム以下といった食塩摂取制限により高血圧の発症を予防できます。

一方、この遺伝子を持たないことがわかれば、たとえ高血圧症でも、食塩制限はあまり必要でないと判断されます。そうなれば、冒頭の減塩食を食べる必然性はなくなります。

もちろん、この場合、減塩食以外の別の高血圧症対策が必要です。言いたいことは、高血圧症だからと一律に減塩食を強制的に食べさせられている高齢者が、最新の科学的なエビデンスに基づけば、食べたいものを食べられる自由度が上がることです。

この記事を書いた人
村田 裕之

村田アソシエイツ株式会社代表取締役、東北大学加齢医学研究所スマート・エイジングセンター特任教授

日本の中高年向け事業開発プロデューサー、起業家、社会学者。専門は中高年を対象とした事業開発と消費行動分析、日本と諸外国の高齢社会研究、スマート・エイジング論など。

1999年に日本で初めて「アクティブシニア市場」の重要性を指摘し、情報武装した高齢者「スマートシニア」の出現を予言した。2004年に「シニアビジネス」という言葉を初めて公に提唱し、女性専用フィットネス「カーブス」の日本への紹介、NTTドコモ「らくらくホン」の商品開発支援、関西大学とのカレッジリンク型シニア住宅の創成など、950以上の企業の事業開発に携わっている。日本におけるシニアビジネス分野の第一人者として知られている。

2006年に東北大学からの依頼でスマート・エイジングのコンセプトを提唱し、2009年10月東北大学スマート・エイジング国際共同研究センターの設立に参画。スマート・エイジング・カレッジを11年間主宰し、市民の健康リテラシーの向上とのべ406社との産学連携を推進してきた。

シンガポールに拠点を置く Asia Pacific Eldercare Innovation Awardsにより2018年5月に「Global Ageing Influencers」に、2024年5月に「Super Ageing Japan Outstanding Entrepreneur(スーパー・エイジング・ジャパン卓越起業家)」に選ばれた。

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