高齢者住宅新聞連載 村田裕之の「シニアビジネス相談室」第39回
GABA入りのチョコを食べてもストレス解消にならない
ストレス社会の現代は、ストレス解消型の商品が求められています。これを反映して「精神的ストレスを軽減する」などとうたった食品、サプリメントが市場に多数見られます。
これらの商品にはGABAという脳の興奮を抑える抑制系の神経伝達物質が機能性関与成分として含まれていることが多いです。
だが、GABAは脳内でしか生成されず、口から食べても脳の「血液脳関門」を通過できないため、脳に成分が到達せず、効果が出ません。
意図的にセロトニン分泌を促すとスッキリする
一方、「意図的に気分をスッキリ」させることができれば、精神的ストレスを軽減できる可能性があります。そのカギが「罰系(ばつけい)」と呼ばれる脳のネットワークです。
これは扁桃体(へんとうたい)という脳の中枢を核として恐怖や不快情動に関係するネットワークです。
例えば、暗い夜道を一人で歩いている時に、物陰から突然不審者が目の前に「わっ」と現れたり、山道を歩いていたら急に大きな蛇が出現したりした時に罰系が働きます。人間を含む動物の防衛本能に直結する機能です。
罰系が活性化すると、それに反応して逆に恐怖や不快感を抑制しようと「セロトニン」という調節系の神経伝達物質が脳内に分泌されます。
セロトニンは目覚めや睡眠など様々な生体機能を調節する役割を持っているほか、不安を抑制し、負の記憶が過剰に形成されるのを抑制します。
「お化け屋敷」や「バンジージャンプ」がスッキリする理由とは?
この罰系の特性をうまく利用して脳内のセロトニンの分泌を促すと「気分スッキリ商品」になります。典型的な例は「お化け屋敷」です。
これは映像や音響、からくり、役者などを駆使し、利用者に対して幽霊や怪物に対する恐怖を疑似体験させるものです。
恐怖を体験すると、罰系が活性化し、これを抑制しようとしてセロトニンの分泌が促されます。
お化け屋敷を出ると恐怖感はなくなりますが、脳内にセロトニンがしばらく分泌し続けるため、スッキリした気分になるのです。
ホラー映画鑑賞、バンジージャンプも似たような商品です。