韓国でなぜ今、シニアビジネスが急浮上しているのか?—成功を左右する『必要条件』と『十分条件』

日本・韓国高齢化率推移 海外動向
日本・韓国高齢化率推移 出所:ニッセイ基礎研究所

高齢者住宅新聞連載 村田裕之の「シニアビジネス相談室」第109回

市場形成に必要な「高齢化率」と「GDP」の壁

近年、海外からシニアビジネスの相談が頻繁に来ます。その際に「シニアビジネス成功の条件は何か」との質問をよく尋ねられます。以下に、最近特に関心が高まっている韓国を例に解説します。

第一に、医療・介護以外のシニアビジネスがその国で活発化するには、高齢化率と一人当たりのGDPが先進国並みになることが必要条件です。

拙著「シニアビジネス」と「団塊シニアビジネス 7つの発想転換」が韓国で翻訳出版された2005年頃、多くの韓国メディアから取材を受け、何度か講演にも招待されました。

しかし、当時は肝心のシニアビジネスそのものの話が韓国国内で少なく、数年後にフェードアウトしていきました。

2005年当時の韓国でビジネスがフェードアウトした理由

この理由は、簡単に言えば、まだ市場がなかったからです。05年の韓国の高齢化率は9%で、日本の20.1%に比べてかなり低く、対象となる高齢者の割合が少なかったのです(図)。

加えて、05年の一人当たりのGDP(名目)は、日本の約3万8,165ドルに対して、韓国は約2万163ドルと日本の6割弱でした。

経済力が小さいため、仮に必要があっても、買える人の割合が少なかったのです。当時韓国の人と話すと、「韓国の高齢者は貧しくてお金を持っていない」と口を揃えて言われたものでした。

条件が揃った2025年、一変する韓国のシニア市場

25年の韓国の高齢化率は20・2%となり、ほぼ超高齢社会(21%超)に近づきました。一人当たりのGDPは、3万6,410ドルで、日本の3万6,120ドルよりも大きくなっています。

これらの数値から、韓国のシニアビジネスも成功のための必要条件が揃ったと言えます。

成功と失敗を分ける決定的な差——経営者の覚悟と改善の徹底

第二に、成功のための十分条件は、具体的に誰をターゲットにして、どの分野で、どのような商材を、どんな企業が、いつ事業として手掛けるのかで大きく変わります。

ただし、27年間の私の経験から言えることは、成功事例では、経営者が退路を断って、本気で取り組み、きめ細かく、徹底的に改善を繰り返していることです。

逆に失敗事例では、経営者が思い付きで部下に指示を出し、取り組みが大雑把で中途半端な場合が多く見られます。

参考記事

顧客が欲しいものを知らなければならない:老いる韓国、先に老いた日本から答えを探す
韓国のファイナンシャルニュースに大きなインタビュー記事が掲載。「顧客が欲しいものを知らなければならない」という言葉がタイトルに採用され、顧客理解の難しさと購買へ導く化学反応の重要性を語っています。
この記事を書いた人
村田 裕之

村田アソシエイツ株式会社代表取締役、東北大学加齢医学研究所スマート・エイジングセンター特任教授

日本の中高年向け事業開発プロデューサー、起業家、社会学者。専門は中高年を対象とした事業開発と消費行動分析、日本と諸外国の高齢社会研究、スマート・エイジング論など。

1999年に日本で初めて「アクティブシニア市場」の重要性を指摘し、情報武装した高齢者「スマートシニア」の出現を予言した。2004年に「シニアビジネス」という言葉を初めて公に提唱し、女性専用フィットネス「カーブス」の日本への紹介、NTTドコモ「らくらくホン」の商品開発支援、関西大学とのカレッジリンク型シニア住宅の創成など、950以上の企業の事業開発に携わっている。日本におけるシニアビジネス分野の第一人者として知られている。

2006年に東北大学からの依頼でスマート・エイジングのコンセプトを提唱し、2009年10月東北大学スマート・エイジング国際共同研究センターの設立に参画。スマート・エイジング・カレッジを11年間主宰し、市民の健康リテラシーの向上とのべ406社との産学連携を推進してきた。

シンガポールに拠点を置く Asia Pacific Eldercare Innovation Awardsにより2018年5月に「Global Ageing Influencers」に、2024年5月に「Super Ageing Japan Outstanding Entrepreneur(スーパー・エイジング・ジャパン卓越起業家)」に選ばれた。

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