高齢者住宅新聞連載 村田裕之の「シニアビジネス相談室」第95回
シニア会員誌は自社の商材を潜在顧客に知ってもらう有効手段
多数のシニア会員をもつ企業では、会員誌を発行しているところもあります。これらの会員誌は、広告出稿やタイアップ企画も受け入れているので、他の事業者も利用できます。うまく活用できれば、自社の商材を潜在顧客に効果的に知ってもらう手段となります。
ただし、やり方を誤ると、シニア会員は当該商材への関心を下げるだけでなく、それを不快に感じることもあるため、注意が必要です。
クロスセルの商材が違和感を持たれるか、持たれないかの境界は?
では、クロスセルの商材が違和感を持たれるか、持たれないかの境界はどこにあるのでしょうか。答えは、当該サービスの内容で変わります。
以前、ある旅行会社が、月に一度送付する会員誌に他社の生命保険の案内を同梱したところ、会員から「お前の会社は俺が旅行している時に死ぬことを望んでいるのか?」とクレームをつけられました。
海外旅行保険の案内であれば問題なかったと思われますが、生命保険の案内だと違和感を覚える人もいるようです。
クロスセルで組み合わせる商材同士の親和性がカギ
この例からお分かりのように、シニア会員向けにクロスセルを行う場合、組合わせる商材どうしの親和性が重要です。
旅行サービスの会員誌への案内同梱であれば、旅行カバンや旅行グッズなど、旅の利便性や楽しみを向上する商材の案内がよいでしょう。
同様にフィットネスサービスの会報誌への案内同梱なら、運動用のアパレル、シューズ、サプリメントなど、健康増進に関連する商材がよいでしょう。
案内同梱だけでなく、会員誌への広告出稿の場合も同様です。
他社の会員から見て自社商材にどんなメリットがあるかを伝えること
商材どうしの親和性が重要な理由は、会員には、その会員になる明確な目的があるためです。
旅行サービスの会員は旅行を楽しむことが、フィットネスサービスの会員は健康増進が目的のはずです。したがって、こうした目的に合わない商材を売り込まれると違和感を覚えるのです。
重要なのは、単に自社商材を他社の会員チャネルで売り込むのではなく、自社商材が他社の会員から見て、どれだけメリットがあるかをきちんと伝えることです。
クロスセルは売り手の言葉のため、売り手中心になりがちです。しかし、本質は買い手中心、買い手の立場でどれだけ価値があるかが重要です。