アーティスト・ファン・コミュニティを商品開発に活用する

ぺんてる「アートクレヨン」 ビジネス切り口別
柴崎春通氏とぺんてるの共同開発「アートクレヨン」

高齢者住宅新聞連載 村田裕之の「シニアビジネス相談室」第94回

柴崎春通氏とぺんてるとで共同開発した「アートクレヨン」

前回取り上げたアーティスト・ファン・コミュニティのもう一つの活用策は共同商品開発です。水彩画講師の柴崎春通氏と大手文具メーカーのぺんてるが開発した「アートクレヨン」が、その一例です。

柴崎氏は194万人(5月23日現在)ものチャンネル登録者数を有するユーチューバーです。自身のチャンネルで様々な画材を使用して描画する動画や描画のテクニックを伝える動画を配信しています。

登録者の多くは水彩画に興味のある人たちで、中高年も多いです。穏やかな語り口で解説しながら作品を添削する動画が特に人気で、多くのファンがいます。

ぺんてるスタッフが柴崎氏の動画を観たのが共同開発のきっかけ

ある日、ぺんてるのスタッフが、柴崎氏が子供向けのクレヨンで驚くほど重厚な絵を描く動画を見て感銘を受け、柴崎氏宅を訪問しました。

「ぺんてるは、なぜ、大人のためのクレヨンをつくらないのか?」と柴崎氏から問われたことが契機となり、共同商品開発が始まりました。

ぺんてるが試作したクレヨンで柴崎氏が絵を描く様子を動画で公開しました。すると、それを見たファンから「とてもクレヨンで描いたと思えない」「油絵のよう」などの意見や描き方に関する質問が多数寄せられました。

これらの意見や質問をもとに試作品を改良し、改良品で絵を描く様子を再び動画で公開しました。すると、また多くの意見が寄せられました。このプロセスを何度か繰り返して製品化しました。現在は一般向けに販売されています。

商品開発と市場創造が同時にできる手法

このように、自社の業種や製品と親和性があり、それなりの規模のファン・コミュニティを持つアーティストを見つけ出せれば、共同商品開発で成功する可能性が高まります。

企業はアーティストのセンスや専門性を活用できるだけでなく、ファン・コミュニティから寄せられる意見が製品改善や市場開拓の有益なヒントになるからです。

また、意見を寄せたファンは、製品の使い手になり、リピート購入者になってくれます。商品開発と市場創造が同時にできる手法と言えましょう。

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