高齢者住宅新聞連載 村田裕之の「シニアビジネス相談室」第77回
11月21日、東京の「西銀座チャンスセンター」前に、もの凄い行列が見られました。実はこの日は年末ジャンボ宝くじの発売日。
並んでいる人は圧倒的にシニアの皆さん。なぜ、これほど多くのシニアがここに並ぶのでしょうか?
疑問への答えを、①なぜ、西銀座チャンスセンターに並ぶのか、②なぜ、行列にはシニアが多いのか、③なぜ、宝くじを買おうとするのか、に分けて解説します。
なぜ、西銀座チャンスセンターに並ぶのか?
数ある宝くじ売り場のなかでも、西銀座チャンスセンターが1億円以上の大きな当りくじがよく出ることで有名だからです。
6つある窓口のうち、特に1番窓口でよく当りが出ると言われ、6時間待ちの行列ができることもあります。
なぜ、行列には男女ともシニアが多いのか?
退職者や子育て終了主婦であれば自由時間が多いため、並びやすくなります。11月21日の発売開始時に一番前に並んでいた男性は3日前から埼玉県川越市から来ていたとのことです。
ちなみに、この方は以前も1番窓口に並んで100万円を当てたことがあるそうです。
そもそも、なぜ、宝くじを買おうとするのか?
実は、宝くじを買うと、脳内の報酬系(ほうしゅうけい)という神経ネットワークに神経伝達物質「ドーパミン」が放出されやすくなり、「元気」や「やる気」、「ワクワク感」を感じさせてくれるからです。
これまでの研究によれば、ドーパミンが放出されやすいのは、「不確実な嬉しい出来事を期待しているとき」です。
つまり、宝くじを買って、当たるかどうかはわからないけど、当たった場合のことを考えてワクワクしているときが、これに該当します。「もういくつ寝るとお正月」という歌がありますが、この歌の内容も該当します。
また、「予期していなかった嬉しい出来事が起きたとき」も同様です。高額の賞金が当たったときがまさにそうです。まさか当たると思っていなかったものが実際に当たったときです。
ワクワク感を感じさせる報酬系の原理は様々なビジネスに応用できる
一般に、退職後に仕事がなくなり、子供とも疎遠になると、日常生活で「ワクワク感」を感じる機会が減りがちです。宝くじを買って当選を期待して待つことが、元気ややる気が出る「きっかけ」になるのです。
宝くじは、競馬・競輪と並んで、いわば公営の巨大なシニアビジネスです。この報酬系が働く原理は、公営ギャンブル以外にも様々なビジネスに応用できます。
報酬系やワクワク感に関する参考文献
スマート・エイジング 人生100年時代を生き抜く10の秘訣(徳間書店)
第2部 元気でいきいきと過ごすための秘訣 秘訣その5 達成すると嬉しい目標を立てる