肩痛に「前開きブラ」脚光、島崎の下着

中高年女性に人気 島崎のフリープ「前開きブラ」 商品・サービス別
中高年女性に人気 島崎のフリープ「前開きブラ」

2023年5月26日 日経MJ連載 納得!シニア消費

フリープの利用者は50歳以上が60% 性別はほぼ女性

齢を重ねるにつれ、若い頃には想像もしなかった体の「不具合」に見舞われることがある。下着メーカーの島崎(埼玉県秩父市)は、こうした不具合をエレガントに解消する「フリープ」と呼ぶ独自開発の製品シリーズで中高年女性の心をつかんでいる。

利用者は50歳以上が60%。性別はほぼ女性だ。なぜ中高年女性に受けているのか、同シリーズの人気商品でひもといてみる。

累計12万枚以上「前開きブラ」 腕を後ろに回せない人に便利

1つ目は、累計12万枚以上売れた「前開きブラ」。千葉県の吉川清美さん(72歳、仮名)は、「肩が痛く、腕が背中に回らなくて困っていたが、これだと着脱がとても楽で助かる」と言う。

通常のブラジャーは背中側にホックがあるが、50代を過ぎるといわゆる「五十肩」などで吉川さんのように腕を後ろに回せなくなる人が増える。前開きブラはこうした需要をすくい上げたものだ。

前側にホックのあるブラジャーは他社の製品にもあるが、カップの下側をワイヤーやゴムで締め付けるものが多い。フリープは伸縮性の良いパワーネットを用いて締め付け感やゴムかぶれを解消している。この点も評判が良い。

累計8万枚以上「カップ付きタンクトップ」 着用時のかゆみ防止が受ける

2つ目は、累計8万枚以上売れた「カップ付きタンクトップ」。愛知県の田中知子さん(66歳、仮名)は「肌が敏感なため化学繊維だとかゆくなるが、肌側が綿100%で触り心地が良く、ありがたい」と話す。

着用時のかゆみを防ぐため、縫い目や縫い代が出来る限り肌にあたらないようにし、素材には空気を多く含んだ綿を用いてやわらかい着心地にする、きめの細かな縫製が支持されている。

3つ目は、「深ばきショーツ」。へその下部分まで深く“はける”もので、下腹の冷えを抑えたい中高年女性向け製品だ。福岡県の平田節子さん(62歳、仮名)は「深ばきでもデザインと色がかわいく、下着は楽しいものという気持ちにさせてくれる」と言う。

「機能性」と「ファッション性」との両立が受ける理由

まとめると、フリープが受けている共通の理由は、着心地の良さを徹底的に追求した「機能性」と、いくつになってもお洒落をしたい気持ちに応える「ファッション性」との両立と言える。

島崎はこうした製品開発で顧客ニーズをどう吸い上げているのか。1つは、オンライン直営店舗やSNS経由での利用者のコメントだ。担当者の丁寧な応対により質の高いコメントが集まっているようだ

もう1つは、電話でのコミュニケーション。年配者からは電話注文も多い。接客時間は長めになるが、細かなニーズをつかむ絶好の機会となる。

電話やFAXでの購入者に対して定期的にアンケート用紙を郵送する。年間900件を超える返信があり、回答に加えて、手書きの手紙を添えてくる人も少なくない。

アナログ情報の活用もシニア向けサービスに重要

購入者の「生の声」は岩手県陸前高田市の工場の社員にも共有される。生産現場のモチベーションアップになり、製品改善や新商品開発に有用とのことだ。

デジタルトランスフォーメーション(DX)推進が喧伝(けんでん)されているが、アナログ情報の活用も重要なことがよくわかる。

機能性とファッション性の両立、デジタルとアナログの両立。これら2つがシニア向けサービスに重要なことを島崎の事例は示している。

成功するシニアビジネスの教科書

 

タイトルとURLをコピーしました