高齢者住宅新聞連載 村田裕之の「シニアビジネス相談室」第71回
「カリスマ添乗員」が1万人のシニアをファンにしてツアーを企画
シニア向け会員制サービスの差異化方法として、今回はファンクラブ型を取り上げます。少し前の例ですが日本旅行の平田進也氏の1万人のファンクラブが有名です。
平田氏は日本旅行の現役社員でしたが、03年度の営業成績が5億円、同社の売上げ平均の5倍の実績を誇る「カリスマ添乗員」でした。学生時代から関西のテレビやラジオ番組に出演し、累計出演数は400回を超えていました。
彼が添乗員を務めるツアーでは女装した「平田進子」が演ずる宴会がシニア女性の人気の的でした。平田氏のようなシニアに人気の「社内カリスマ」がいる企業は、こうした人材を会員制サービスの差異化に活用すべきでしょう。
ミリオンセラー著者をアイドルにして新規購読者を増やし、ツアーを売る
かつてシニア女性向け雑誌「いきいき」(現:ハルメク)で大人気を博した故・日野原重明 元聖路加国際病院名誉院長も似た例です。いきいきでの連載「生き方上手」を単行本にしたらミリオンセラーとなり、これで雑誌の知名度が上がり、定期購読者数が飛躍的に拡大しました。
日野原さんの誕生会を日比谷公会堂で行うと全国中からいきいきの会員が集まり、3千人収容の会場は満席になる盛況ぶりでした。医師だった日野原さんは、いきいきで一般の人に知られるようになり、91歳でメディアデビューを果たしました。
その道の第一人者が生徒をファンにして派生商品を売る
最近の例では、押し花アートの第一人者、杉野宣雄氏が挙げられます。押し花アートとは、草花を自然の色のままに乾燥させ、長期間色あせない技術を用いてクラフトワークなどの作品にするものです。NHKの朝ドラ「らんまん」の押し花監修を務めています。
杉野氏が会長を務める世界押花芸術協会では約4千人のインストラクターが会員として登録。年齢構成は50歳以上が91%。ほとんどが女性です。会員一人当たり平均30名の生徒を持つため、約12万人が活動に取り組んでいます。
この「押し花アートコミュニティ」の潜在力に注目し、花き小売業者、旅行会社、通販会社、不動産会社、カルチャーセンターなど多くの異業種企業からコラボの引き合いが来ています。
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