何かよいシニアビジネスはありませんか?

ビジネス切り口別
筆者が米国で初めて訪れたカーブス店舗の様子

高齢者住宅新聞 連載 村田裕之の「シニアビジネス相談室」第2回

「カーブス」に見る新規事業の肝所

私は講演での質疑の際に「何かよいシニアビジネスはありませんか?」という質問を時々受けます。たかが1時間程度の講演でそれが講師から聴けるなら、これほど得なことはないでしょう(笑)。

とはいえ、私は新規事業の案件を見ると「筋が良い案件か否か」の判断がかなりの確度でつきます。

例えば、女性専用フィットネス「カーブス」を米国で初めて見た時、次の3つの理由から「これは日本でもかなりいける」と確信しました。

第一に、見た目が「ちゃっちい」(貧粗な)こと

わずか40坪の空間にトレーニングマシンが置いてあるだけ。内装は極めて簡素。更衣室はなく仕切りのカーテンのみ。既存のスポーツジムを知る人は「何てちゃっちいジムだ」と感じます。

しかし、この「ちゃっちさ」がゆえに、既存の大手事業者は絶対に真似しないと私は思いました。大手業者は駅前の一等地に温浴設備やプール付きの立派な施設で運営しており、それを売りにしていたからです。

これは新規参入者にとってかなり重要なことです。実際、大手事業者が真似し始めたのはカーブスの事業規模がかなり大きくなってからでした。

第二に、成果に無関係のものは一切排除していること

例えば、温浴設備もシャワーもありません。講演等でこの話をすると「日本は湿気が多く、女性は清潔好きだ。シャワーがなくてうまくいくのか」と散々言われました。

しかし、結論はシャワーなしでも誰も文句を言いません。住宅地に近いのでシャワーが必要な人は自宅で浴びればよいのです。

一方、水設備がないことで設置空間が不要、初期投資も維持費用も大幅に削減できます。その結果、利用者の価格を下げることができるのです。

第三に、国の補助金や介護保険報酬に一切依存しないこと

料金は全て利用者の自己負担。従って、サービスの質と価格とのバランスで顧客に受け入れられるかが決まります。このためスタッフは常にサービス品質の向上に不断の努力が必要です。

しかし、これが事業者の力量を向上します。近年、介護保険報酬が減額傾向にあるなかでカーブスの事業モデルが注目される理由はこれらの点にあるのです。

この記事を書いた人
村田 裕之

村田アソシエイツ株式会社代表取締役、東北大学加齢医学研究所スマート・エイジングセンター特任教授

日本の中高年向け事業開発プロデューサー、起業家、社会学者。専門は中高年を対象とした事業開発と消費行動分析、日本と諸外国の高齢社会研究、スマート・エイジング論など。

1999年に日本で初めて「アクティブシニア市場」の重要性を指摘し、情報武装した高齢者「スマートシニア」の出現を予言した。2004年に「シニアビジネス」という言葉を初めて公に提唱し、女性専用フィットネス「カーブス」の日本への紹介、NTTドコモ「らくらくホン」の商品開発支援、関西大学とのカレッジリンク型シニア住宅の創成など、950以上の企業の事業開発に携わっている。日本におけるシニアビジネス分野の第一人者として知られている。

2006年に東北大学からの依頼でスマート・エイジングのコンセプトを提唱し、2009年10月東北大学スマート・エイジング国際共同研究センターの設立に参画。スマート・エイジング・カレッジを11年間主宰し、市民の健康リテラシーの向上とのべ406社との産学連携を推進してきた。

シンガポールに拠点を置く Asia Pacific Eldercare Innovation Awardsにより2018年5月に「Global Ageing Influencers」に、2024年5月に「Super Ageing Japan Outstanding Entrepreneur(スーパー・エイジング・ジャパン卓越起業家)」に選ばれた。

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