規制導入・規制緩和で生まれる市場機会を考える

ビジネス切り口別

高齢者住宅新聞連載 村田裕之の「シニアビジネス相談室」第25回

贈与税非課税で多額の資金が動いた

新しい法律や制度の施行、規制緩和で新たな市場が生まれます。こうした機会をうまく活用すると、比較的敷居が低く、新規事業に進出できます。

例えば、13年4月に祖父母から孫への教育資金の贈与が1,500万円まで非課税になる制度が始まりました。14年4月現在で三菱UFJ信託銀行が約2万9千件、三井住友信託銀行は約2万件と想定を上回る契約数となりました。

贈与額は大手信託銀行4行の合計で4,300億円、契約数は6万5千件に達しました。信託銀行業界は、当初は15年末までに5万4千件を見込んでいたのですが、わずか1年でそれを上回りました。

この制度については、当初私は金銭的に余裕のある富裕層向けのように感じていましたが、実際はもっと下の層まで取り込んでいたようです。「少しでも目減りを防ぎたい」という防衛意識を刺激して契約数を増やしたのです。

それまで信託銀行業界は数千万円程度の小口の取引はあまり積極的に扱っていなかったのですが、この制度導入を機会に、従来の方針を変え、いろいろなサービスを提供するようになりました。

軽減税率が高級店のデリバリーを促進する

今年10月に消費増税が予定されていますが、軽減税率テイクアウトやデリバリーは税率が据え置きになります。これを狙った「ポータグルメ」という業態が注目を浴びています。

ポータグルメとは「ポータブル(持ち運びできる)」+「グルメ(おいしい)」を合わせた造語。舌の肥えたシニア向けに、量は少なくとも、あくまでもおいしく、満足度の高い食事を配達してくれる需要が想定されます。

すでに、ミシュラン1つ星で予約が難しい焼き鳥店・鳥しきは弁当販売を始めました。また、行列で有名なステーキ・ハンバーグ店のミート矢澤もテイクアウト専門店を出しています。今後はこれまでデリバリーをしなかった外食店の参入が増えるでしょう。

このように新たな規制導入・規制緩和は新たな市場を生み出すきっかけとなります。シニア層に関わる規制強化・緩和の動きには要注意です。

この記事を書いた人
村田 裕之

村田アソシエイツ株式会社代表取締役、東北大学加齢医学研究所スマート・エイジングセンター特任教授

日本の中高年向け事業開発プロデューサー、起業家、社会学者。専門は中高年を対象とした事業開発と消費行動分析、日本と諸外国の高齢社会研究、スマート・エイジング論など。

1999年に日本で初めて「アクティブシニア市場」の重要性を指摘し、情報武装した高齢者「スマートシニア」の出現を予言した。2004年に「シニアビジネス」という言葉を初めて公に提唱し、女性専用フィットネス「カーブス」の日本への紹介、NTTドコモ「らくらくホン」の商品開発支援、関西大学とのカレッジリンク型シニア住宅の創成など、950以上の企業の事業開発に携わっている。日本におけるシニアビジネス分野の第一人者として知られている。

2006年に東北大学からの依頼でスマート・エイジングのコンセプトを提唱し、2009年10月東北大学スマート・エイジング国際共同研究センターの設立に参画。スマート・エイジング・カレッジを11年間主宰し、市民の健康リテラシーの向上とのべ406社との産学連携を推進してきた。

シンガポールに拠点を置く Asia Pacific Eldercare Innovation Awardsにより2018年5月に「Global Ageing Influencers」に、2024年5月に「Super Ageing Japan Outstanding Entrepreneur(スーパー・エイジング・ジャパン卓越起業家)」に選ばれた。

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