高齢者住宅新聞連載 村田裕之の「シニアビジネス相談室」第89回
商品の見た目を「スタイリッシュ」にすると市場が広がる
シニアを対象にした商品では、身体機能の衰えによる不便さを解決する「機能」にとどまらず、商品の見た目を「スタイリッシュ」にすると市場が広がります。
なぜならば、年を取ると一般に身体機能は衰えますが、ファッション・センスはそれほど衰えないからです。にもかかわらず、対象商品には年寄り臭くつくられているものがまだ多いのです。
なぜ、「らくらくホン」は、売れ行きが踊り場に差し掛かかったのか?
NTTドコモの「らくらくホン」は、世界初のシニア向け携帯電話として累計2500万台以上売れた大ヒット商品です。
しかし、発売当初の商品の訴求点は「ボタンが大きく押しやすい」「文字が見やすい」「音声が聞きやすい」「握りやすい」というものでした。
老眼、難聴、握力低下といった加齢に伴う身体の衰えをカバーし、ユニバーサルデザインに基づいていればシニア向け商品になると売り手側が考えていたからです。
こうした機能中心の商品でも、市場投入後から数年間は爆発的に売れました。ところが、しばらくすると売れ行きが踊り場に差し掛かりました。
ターゲットユーザーである60歳以上の人を対象に調査すると、半分以上が「らくらくホンは使いたくないと思っている」との結果が出ました。理由は「見た目がジジ・ババ臭くて所持していると年寄り扱いされる」というものでした。
最大の変更点は洗練されたデザインにしてジジ・ババ臭さを消したこと
調査結果を踏まえ、商品デザインを大幅に変更した新機種を追加しました。最大の変更点は、見た目が洗練されたデザインにしてジジ・ババ臭さを消したことです(写真1)。
また、広告もそれまでの老人が使うシーンではなく、大竹しのぶさんが使うシーンに変え、親しみやすさを出しました(写真2)。
これらの工夫の結果、らくらくホンは再び月別売れ行きトップ10に必ず1機種以上入るようになりました。
この例のように、十分な機能を持つ商品は、デザインをスタイリッシュにすると市場が広がります。同様の傾向が老眼鏡や補聴器などの市場でも見られます。
シジ・ババ臭い商品の市場に商機あり、です。