「機能性表示食品」という看板で消費者に売れるわけではない

特定の機能性を訴求しているが機能性表示食品でないヒット商品 国内動向
特定の機能性を訴求しているが機能性表示食品でないヒット商品

シルバー産業新聞 連載「半歩先の団塊・シニアビジネス」第206回 

「機能性表示食品」に登録された食品の約6割が販売中止になっている

シニアの健康不安の解消を謳う商品として、これまでに膨大な数の機能性表示食品が市場に投入されてきた。

だが、小林製薬の機能性表示食品「紅麹コレステヘルプ」を摂取した人に腎疾患等が発生した事件を契機に、機能性表示食品制度自体の信憑性が揺らいでいる。

実はこの制度に対しては、以前からその信憑性について疑問が上がっていたのだが、「紅麹コレステヘルプ」事件が大きな社会問題になったため、一段と批判が高まっている。

機能性表示食品制度が2015年4月に始まって以来、2024年2月23日現在で8,028件もの食品が届け出されている。届け出が承認されれば、製品に「機能性表示食品」と表示でき、国によるお墨付きを得たと謳えるからだ。

一方、このうち販売中のものが3,382件。と言うことは、既に販売終了のものが4,646件あることになる。つまり、せっかくコストと手間をかけて届け出て承認されても、その6割は販売を中止しているのだ。

ちなみに、これらの数値は小林製薬の事件が明るみに出る前の時点のものである点に注意されたい。

「機能性表示食品と表示できる」イコール「消費者に売れる」ではない

この事実は「機能性表示食品」と表示できることと、当該製品が消費者に売れることとは全く別ということを意味する。特にシニアに売れている製品では、機能性表示の有無は売れ行きにあまり関係がないように見える。

例を挙げて説明する。森永乳業の「ミルク生活」は、利用者の7割が60歳以上で、男女比率は80%が女性。店頭での市場シェアは90%以上ある。

1回20グラムの摂取で高齢者に必要なたんぱく質やカルシウムなどの栄養分がまとめて摂れる点、ミルクなのに牛乳臭くなく、牛乳が苦手な人でも飲みやすい点などが受けている。

加齢に伴い不足するが普段の食事では摂りにくい栄養成分を少量でも必要分摂れる利便性が費用対効果を感じさせ、納得性を高めているからだ。

日清オイリオの「日清有機えごま油 フレッシュキープボトル」は、累計280万本出荷の人気商品だ。22年度購入者の90%が50歳以上、男女比は15対85で女性が多い。

魚以外から摂りにくいオメガ3脂肪酸が小さじ一杯で1日分摂れる点、開封後も酸化しにくく、油ダレしにくい容器で使いやすい点、クセのないさっぱりした味と香りでどんな料理にも使える点が受けている理由だ。

オメガ3脂肪酸は、血中の中性脂肪低下、血管にできたプラーク(動脈硬化巣)安定化、炎症抑制などの作用があると報告され、脳卒中や心筋梗塞の予防に有用とされる。

これら2つの製品の共通点は「特定の機能性」を訴求しているが機能性表示食品ではないことだ。にもかかわらず、シニア消費者に支持されているのは、手軽に必要な栄養分が摂れる、使いやすい、コスパがよい、などのトータルな価値が高いからに他ならない。

バイヤーが価値ありと思うことと消費者が価値を感じることにギャップあり

本年1月31日付日経MJの「スーパーのバイヤーを対象にした調査結果」によれば、新たな付加価値のある商品開発を望む商品として最も声が多かったのが、実は「機能性表示食品(飲料含む)」だった。

だが、前述の通り、機能性表示食品だからといって必ずしも消費者に売れるわけではない。つまり、バイヤーが価値ありと思っていることと、消費者が価値を感じることにギャップがあるのだ。

バイヤーは、機能性表示食品として届け出されたものの6割強が販売中止になっている事実を認識すべきだろう。

一方、メーカーは、機能性表示食品の届け出より、ターゲット消費者がその製品に求めている「機能性」「利便性」「コスパ感」に磨きをかけ、「トータルな商品価値」を高めるべきなのだ。

小売業のバイヤーが欲しがる商品は、メーカーや卸業にとっては短期的に売りやすいだろうが、それを消費者が買わなければ、中期的には在庫が増えるだけなのだ。

この記事を書いた人
村田 裕之

村田アソシエイツ株式会社代表取締役、東北大学加齢医学研究所スマート・エイジングセンター特任教授

日本の中高年向け事業開発プロデューサー、起業家、社会学者。専門は中高年を対象とした事業開発と消費行動分析、日本と諸外国の高齢社会研究、スマート・エイジング論など。

1999年に日本で初めて「アクティブシニア市場」の重要性を指摘し、情報武装した高齢者「スマートシニア」の出現を予言した。2004年に「シニアビジネス」という言葉を初めて公に提唱し、女性専用フィットネス「カーブス」の日本への紹介、NTTドコモ「らくらくホン」の商品開発支援、関西大学とのカレッジリンク型シニア住宅の創成など、950以上の企業の事業開発に携わっている。日本におけるシニアビジネス分野の第一人者として知られている。

2006年に東北大学からの依頼でスマート・エイジングのコンセプトを提唱し、2009年10月東北大学スマート・エイジング国際共同研究センターの設立に参画。スマート・エイジング・カレッジを11年間主宰し、市民の健康リテラシーの向上とのべ406社との産学連携を推進してきた。

シンガポールに拠点を置く Asia Pacific Eldercare Innovation Awardsにより2018年5月に「Global Ageing Influencers」に、2024年5月に「Super Ageing Japan Outstanding Entrepreneur(スーパー・エイジング・ジャパン卓越起業家)」に選ばれた。

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