「2025年問題」の真の意味と私たちがやるべきこと

年齢階級別 要介護認定率 国内動向
図1 年齢階級別要介護認定率

シルバー産業新聞 連載「半歩先の団塊・シニアビジネス」第213回 

そもそも「2025年問題」とは何か

今年2025年は、かねてより「2025年問題」として注目されてきた年だ。

2025年問題とは、一般に「1947年から1949年に生まれた団塊の世代の全員が75歳に到達。人口ボリュームの大きいこの世代が、医療や介護へのニーズが急速に高まる後期高齢者になることで医療費や介護費が急増し、これを支える現役世代や企業が活力を失っていく問題」とされる。

ところが、そもそも、なぜ後期高齢者になると医療や介護へのニーズが急速に高まるのか、2025年に起きる問題とはどのようなものか、などの理解が一般には乏しいようだ。本稿では改めてその背景等を解説したい。

75歳は私たちの身体変化の大きな「曲がり角」

図2 年齢階級別の受療率

年齢階級別の要介護(要支援)認定率では(図1)、70歳から74歳では6.1%なのに対し、75歳から79歳では12・9%、80歳から84歳では28.1%、85歳から89歳では50.3%と、75歳を過ぎると数値が急増することがわかる。

また、年齢階級別の受療率(入院で治療を受ける率)では(図2)、人口10万人当たりの人数は、70歳から74歳では1,820人なのに対し、75歳から79歳では2,635人、80歳から84歳では3,879人、85歳から89歳では5,578人と、要介護認定率と同様に75歳を過ぎると数値が急増する。

さらに、年齢階級別の認知症有病率では(図3)、70歳から74歳では4.1%なのに対し、75歳から79歳では13.6%、80歳から84歳では21.8%、85歳から89歳では41.4%と、やはり75歳を過ぎると数値が急増する。

「2025年問題」とは、2025年に起きる問題ではない

これらのデータでお分かりのように、75歳は私たちの身体変化の大きな「曲がり角」となっている。後期高齢者という呼び名は評判が悪いが、75歳は私たちの身体機能面の大きな転機である点を認識する必要がある。

一方、前掲の図の通り、75歳を境に各々数値は増加ペースが大きくなるが、75歳になった時点では、それまでに比べて特に高いわけではない

つまり、2025年に団塊世代の全員が75歳に到達した時点では、医療・介護ニーズがとりわけ高いわけではないのだ。

言い換えると、「2025年問題」とは、2025年に起きる問題ではない医療・介護ニーズの急速な高まりに起因する「問題」が起き始めるのが2025年、というのが正しい理解だ。

これから私たちがやるべき対策は何か

2025年問題」への対策は、供給側(介護サービス提供者)と需要側(要介護者、要介護者予備軍)の双方に必要だ。供給側による対策は、既に多くが語られているので、ここでは需要側による対策を改めて述べる。

2025年以降、要介護者と要介護者予備軍の急速な増加が見込まれる一方、これを支える15歳から64歳の生産人口は確実に減っていく。現状では有効な少子化対策は考えられないため、近い将来、要介護状態になった場合に良質な介護サービスを受けられない可能性がある。

この前提に立つと、必要なのは、①高齢者はできるだけ要介護状態にならないようにすること、②仮に要介護状態になっても、可能な限り速やかに健康な状態に戻るようにすることだ。

国民生活基礎調査(2019年)によれば、要介護になる原因は、男性では脳血管疾患(脳卒中)が26%で最も多く、認知症14%、高齢による衰弱11%と続く。

一方、女性では認知症が19%で最も多く、骨折・転倒16%、関節疾患と高齢による衰弱が14%、脳卒中が11%と続く

脳卒中を例に挙げると、その多くは動脈硬化がもとで発症する。その促進要因は、高血圧症、糖尿病、脂質異常症だ。高血圧は毎日の血圧測定で、糖尿病と脂質異常症は、数か月に一度の血液検査で状態を把握できる。

75歳を過ぎた団塊の世代は、これらの状態把握を怠らず、体質改善アクションを実行することが、「2025年問題」への対策となると心得るべきだ。

タイトルとURLをコピーしました