シニアの消費を促すためには、商品を売る側が意図的に自社の顧客に仕事の機会をつくること

ビジネス切り口別
ホームセンターとシニアの家庭菜園は相性がよい

高齢者住宅新聞連載 村田裕之の「シニアビジネス相談室」第61回  

シニアは副収入の多くが可処分所得になる

シニアの消費を促すためには、売る側の努力だけでは不十分です。買い手側の条件をよくすることも大切です。資産は多くとも所得の少ないシニアは、日常生活における出費は月の所得、つまり、多くの人が年金収入の額にほぼ比例するのです。

平均的にはあまり高額でない年金収入のなかでやりくりしているため、どうしても日々の出費は倹約気味になっています。そこで、商品・サービスを売る側の企業が年金以外の副収入を得る機会を提供すれば、可処分所得が増えるので消費が促されます。

たとえば、スーパーが隣接する空き地を活用し、顧客の中から野菜づくりをする人を募集し、育った野菜をスーパーで販売する仕組みが考えられます。

このビジネスモデルでは、野菜を作った人たちは若干の収入を得られるだけでなく、売り場の商品配置などのアイデアも提供するようになります。自ら売場に立って、自分の野菜を売ることも起きるでしょう。

その結果、当事者意識が芽生え、口コミによる宣伝効果も期待できることに加え、そのスーパーからもっといろいろ買うようになるでしょう。

商品を売る側が自社の顧客に仕事の機会をつくると消費が増える

退職者のなかには家庭菜園で野菜づくりをしている人がたくさんいます。このような人たちは、これまでは収穫のほとんどをご近所にタダでお裾分けしていました。

しかし、収穫した野菜を集荷し、販売できる場所を用意すれば、ビジネスとして成り立つ可能性が出て来ます。

ホームセンターでこのような仕組みを考えれば、野菜の栽培者たちの種や肥料、家庭菜園に必要な道具類は、必ずそのホームセンターで購入するはずです。

まとめると、シニアの消費をさらに促すためには、商品を売る側が意図的に自社の顧客に仕事の機会をつくることです。

商品を売ることだけを考えるのではなく、商品を買う側が金銭的報酬だけでなく、社会とのつながりを得るなどさまざまな報酬を得られるビジネスのサイクルを考えることです。

この記事を書いた人
村田 裕之

村田アソシエイツ株式会社代表取締役、東北大学加齢医学研究所スマート・エイジングセンター特任教授

日本の中高年向け事業開発プロデューサー、起業家、社会学者。専門は中高年を対象とした事業開発と消費行動分析、日本と諸外国の高齢社会研究、スマート・エイジング論など。

1999年に日本で初めて「アクティブシニア市場」の重要性を指摘し、情報武装した高齢者「スマートシニア」の出現を予言した。2004年に「シニアビジネス」という言葉を初めて公に提唱し、女性専用フィットネス「カーブス」の日本への紹介、NTTドコモ「らくらくホン」の商品開発支援、関西大学とのカレッジリンク型シニア住宅の創成など、950以上の企業の事業開発に携わっている。日本におけるシニアビジネス分野の第一人者として知られている。

2006年に東北大学からの依頼でスマート・エイジングのコンセプトを提唱し、2009年10月東北大学スマート・エイジング国際共同研究センターの設立に参画。スマート・エイジング・カレッジを11年間主宰し、市民の健康リテラシーの向上とのべ406社との産学連携を推進してきた。

シンガポールに拠点を置く Asia Pacific Eldercare Innovation Awardsにより2018年5月に「Global Ageing Influencers」に、2024年5月に「Super Ageing Japan Outstanding Entrepreneur(スーパー・エイジング・ジャパン卓越起業家)」に選ばれた。

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