2022年4月22日 日経MJ連載 納得!シニア消費
累計145万個、シニア層が3割以上購入
人生の約3分の1は眠りだ。毎日を元気にいきいきと過ごすためには、毎晩ぐっすりとよく眠れること、つまり良質の睡眠が不可欠だ。
睡眠の質を高めるための必須アイテムのひとつが枕だ。だが、既製品の枕は店頭では良さそうに見えても、いざ使ってみると自分の体形に合わず、首痛を引き起こすことも。
タナカふとんサービス(愛知県一宮市)の「じぶんまくら」は、そんな不満を解消する商品だ。自分の頭・首の形に合わせて枕の形や硬さをカスタマイズできる点。
枕全体に14~18個のポケットがあり、体形に合わせて硬さの異なる8種類の中材を選べ、量も変えられる。最も低価格なものでも税込27,500円するが、2007年の発売から累計145万個以上売れた商品だ。
購入者の年齢別では60代以上が3割とシニア層の割合が目立つ。なぜ、シニア層にこの商品が受けているのか。
加齢で下がる睡眠の質を改善
前提として考えられるのが、中年期以降には睡眠障害になりやすく、快眠のための商品を常に探している人が多いことだ。
中高年層は若年層に比べて頻繁に目覚める「中途覚醒」や、早く目覚めすぎて困る「早朝覚醒」が多いとの調査結果もある。睡眠障害が毎日続くのは大変苦痛だ。
子育て終了をきっかけに寝具に関心を寄せる消費者もいるようだ。同社によると「生活の中心が子供ではなく自分になることで、健康面にも意識が向く。これまで気にしなかった寝具にも目が向くようになる消費者が女性を中心に目立つ」そうだ。
加齢に伴い起床時に首痛や腰痛を感じるようになり、改善策が必要になることも大きい。じぶんまくらは、こうした睡眠の質に課題を抱えるシニアのニーズをとらえているというわけだ。
埼玉県富士見市の小林敏夫さん(仮名、60歳)は「自分に合う枕を長年探し求めてきたが、やっと出会えた」と話した。
実際に店舗に行くと専門スタッフが頭・首の形と枕との相性を確認し、中材の種類や量を変えてフィット感を調節する。あおむけでも横を向いても適切な高さになるようにする。これによって睡眠時にどのような向きになっても寝返りを妨げないようにしている。
製品寿命まで何度でも無料でメンテナンス
何度でも無料で枕の高さ調整・中材補充などのメンテナンスをしてくれる点も好評だ。平均的には所得が少なく、毎月の出費を抑えたい退職シニア層にはうれしいサービスだ。
自分用にカスタマイズした枕を作っても、すぐに効果はわからない。自宅の寝床で使いながら自分の睡眠環境に合ったものに少しずつ調整できるのが真のカスタマイズ枕だろう。
とはいえ、販売数がさらに増えて無料メンテンスの対象が増えれば経営的に厳しくならないのか。そこはじぶんまくらをきっかけとして、枕カバーや「じぶんマットレス」など関連商品を買ってもらう販売戦略だ。下半身の血流が悪く、冷え性のシニア層には温熱布団をお勧めすると購入されやすいとのことだ。
枕やマットレスが商品の中心だが、今後はカスタマイズ志向の様々な快眠商品をワンストップで扱う業態になれば、さらに利用者が増えるのではないだろうか。