高齢者住宅新聞連載 村田裕之の「シニアビジネス相談室」第70回
誰でも提供可能なサービスをかき集めても差異化はできない
シニア向け会員制サービスでは、誰でも提供可能なサービスをいくらかき集めても、それだけでは差異化はできません。仮に短期的にできても長期的な差異化は難しいです。
長期的な差異化の方法としては①独占型、②ファンクラブ型、③キラーコンテンツ型が考えられます。今回は①独占型の例として、JR東日本の「大人の休日倶楽部」を取り上げます。
独占型の例 JR東日本「大人の休日倶楽部」
これは当初ジパング倶楽部という名称でスタートした男性満65歳以上、女性満60歳以上を対象としたJRの運賃割引です。
会員になると、全てのJR運賃がグリーン車も含み、年に3回目まで2割引、4回目から3割引になります。年齢条件から明らかなようにリタイア層をターゲットにしています。
ジパング倶楽部はその後「大人の休日」という名称をつけ、パック旅行、イベント、カルチャーセンターなどに活動を広げました。
さらに、05年9月から、男女満50歳以上を対象に「大人の休日倶楽部ミドル」を新設し、従来のジパング倶楽部を「大人の休日倶楽部ジパング」としました。ただし、ミドルでは運賃割引は5パーセントです。
年会費はジパングの場合、消費税込みで個人会員が3,840円、夫婦会員が二人で6,410円です。年に3回以上JRで長距離旅行をすれば、会費の元がとれることから、会員数はジパングが約175万人、ミドルが約96万人、合わせて約271万人(2022年12月現在)です。
事業化時に独占型経営資源の有無と市場競争力を確認・精査することが重要
大人の休日倶楽部は、日本における有料シニア向け会員サービスとして最大の会員数です。しかし、このサービスはJRグループ以外には提供不可能なものであり、それゆえ独占型の例として紹介しています。
この事例から言えることは、仮に他社にはない独占的に提供できるコンテンツが社内にあるなら、それは会員制サービスの差異化になり得るということです。
会員制サービスの事業化の際には、そうした経営資源の有無と市場競争力を一度確認・精査するべきでしょう。
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