時間消費がモノ消費を促す「大規模美術館」という総合アートパーク

オルセー美術館の内観 ビジネス切り口別
オルセー美術館の内観

高齢者住宅新聞連載 村田裕之の「シニアビジネス相談室」第80回

欧米の著名美術館は美術品を中心とした「総合アートパーク」

ニューヨークのメトロポリタン美術館やパリのオルセー美術館などの大規模美術館は、単なる美術館というより、美術品を中心とした総合アートパークとでも言うべきものになっています。

小規模美術館だと、来場者は展示品を見たら基本的に終わりで、その美術館を出ていきます。ところが、先に挙げた大規模美術館の場合、全ての展示品を見るだけで最低半日はかかります。このため途中でカフェやティールームで休憩します。

また、館内に立派なライブラリーや関連グッズを売っているショップが多くあるため、展示品の鑑賞が一段落すると、そちらで時間をつぶしたり、商品を買ったりします。中には演奏会や展示に関連するレクチャーが開催されるところもあります。

大規模美術館は回遊閉鎖型の「知的時間消費」の場

これらを見終わると、美術館の外に出るのが惜しいため、館内のレストランで食事をします。

こうした美術館にあるレストランは、日本の公的美術館の食堂にありがちな粗末なものではなく、立派なものが多いため美術館での鑑賞の気分をさらに盛り立ててくれます。

そして、食事が終わって一休みすれば、また展示コーナーに戻り、まだ見ていない展示物を鑑賞したり、お気に入りの展示物をもう一度鑑賞しったりします。そして疲れれば、また休憩して飲食します。

こうして、大規模美術館では一人の来場者が落とすお金は、美術館への入場料の何倍にもなっていきます。大規模美術館は、美術館内の複数か所を回遊して美術品を鑑賞したり、知識を得たり、連れの人と意見交換したりという「知的時間消費」の場となっているのです。

日本にありそうでない「大規模アートパーク」の可能性

この時間消費の結果、美術品にまつわる絵葉書や作品レプリカ、ポスター、書籍などを買いたくなり、「モノ消費」につながります。

日本では東京ディズニーリゾートなどのテーマパークはいくつかありますが、こうした大規模美術館は見られません円安で気軽に海外渡航しにくくなった今、日本にも大規模美術館をつくれば、シニア層が喜んで財布のひもを緩めてくれるでしょう。

この記事を書いた人
村田 裕之

村田アソシエイツ株式会社代表取締役、東北大学加齢医学研究所スマート・エイジングセンター特任教授

日本の中高年向け事業開発プロデューサー、起業家、社会学者。専門は中高年を対象とした事業開発と消費行動分析、日本と諸外国の高齢社会研究、スマート・エイジング論など。

1999年に日本で初めて「アクティブシニア市場」の重要性を指摘し、情報武装した高齢者「スマートシニア」の出現を予言した。2004年に「シニアビジネス」という言葉を初めて公に提唱し、女性専用フィットネス「カーブス」の日本への紹介、NTTドコモ「らくらくホン」の商品開発支援、関西大学とのカレッジリンク型シニア住宅の創成など、950以上の企業の事業開発に携わっている。日本におけるシニアビジネス分野の第一人者として知られている。

2006年に東北大学からの依頼でスマート・エイジングのコンセプトを提唱し、2009年10月東北大学スマート・エイジング国際共同研究センターの設立に参画。スマート・エイジング・カレッジを11年間主宰し、市民の健康リテラシーの向上とのべ406社との産学連携を推進してきた。

シンガポールに拠点を置く Asia Pacific Eldercare Innovation Awardsにより2018年5月に「Global Ageing Influencers」に、2024年5月に「Super Ageing Japan Outstanding Entrepreneur(スーパー・エイジング・ジャパン卓越起業家)」に選ばれた。

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