現代はモノ余りの時代であり、インターネットが社会のインフラに根付いた時代である。この「経済の成熟化」と「市場の情報化」が、シニア市場を「買い手市場」に変えていく。
図表4-1は、年齢層別インターネット利用率の変化である。過去10年間で最も利用率が増えたのは、60代以上の年齢層である。いまや日本は世界で最も安くブロードバンドを使える国の一つだ。また、携帯電話の普及率は9割を超え、60代でもすでに人口の6割以上が携帯電話を使っている。
出所:総務省通信利用動向調査 2009年より村田アソシエイツ作成
出所:総務省通信利用動向調査 2009年より村田アソシエイツ作成
買い手が情報機器を使いこなすことで情報収集力が飛躍的に高まる。情報収集力が高まると、自分の求める商品やサービスに関する選択肢が多くなる。従来は商品の売り手のいいなりになっていたのが、豊富な情報を背景に、自分の好みに応じていろいろと売り手に対してモノを申すようになる。つまり、情報収集力をもったシニアは、これまでより交渉力のある「賢い高齢消費者」になる。
ちなみに、筆者は11年前に、このようなネットを縦横に活用して情報収集し、積極的な消費行動をとる先進的なシニアを「スマートシニア」と呼び、今後こうした高齢者層が増えていくことを予想していた。
スマートシニアが増えたため、商品の売り手は、このような消費者に対応するために、同じ品質ならより価格の低いものを、同じ価格ならより品質の高いものを提供しないと買ってもらえなくなってきた。つまり、従来売り手が主導権を持っていた多くの「売り手市場」が、買い手が主導権を持つ「買い手市場」に変わってきたのである。