シニアのニーズはどのようにして把握するのが良いか?

ビジネス切り口別

高齢者住宅新聞連載 村田裕之の「シニアビジネス相談室」第15回

売りたい商品を顧客に提示して顧客の反応を直接知れ

一番良いのは、その会社の社員が、売りたいターゲット層と直接のコミュニケーション機会を持つことです。

そうすれば調査会社によるアンケートなどでは見えてこないターゲット層の考えていることが、皮膚感覚ではっきりと分かってきます。

この事を私自身の体験を例にお話ししましょう。

私はかつて高級老人ホーム販売のために営業最前線にいたことがあります。見学に訪れたシニアの方々からは「ここはとても素敵。ぜひ入居したいわ。」との好感触のお言葉を頂きました。見学会では終始ご機嫌の様子で、アンケートへの回答内容もきわめて前向きでした。

ところが、いざ具体的な商談の場になるや急に歯切れが悪くなるのです。

後でこっそりと事情を伺うと、予算の問題や家族関係の問題などで、どうしても買えないと呟かれる。高額商品ほどそうした傾向が強く、実は見学会でのアンケートの回答はほとんど当てになりません。

シニアのニーズ把握の究極は「人間を知る」こと

そのような場合でも、その人の家族構成から、どういう可能性があるかを想像し、たとえば息子や娘との間での確執、あるいは夫との関係が不和である場合なども念頭においた周到な対応策を提案すれば、そうした姿勢に心打たれて、契約に踏み切るかもしれません。

シニアの年齢層なら、誰でも何らかの生活上の課題を持っているのが普通です。家族との確執、自分自身や家族の病気、相続トラブル、孤独など。

そのような人の気持ちの機微が常識として分かっていなければ、彼らの消費行動を理解することは到底できません。

60歳代、70歳代の人は、どういう風に世の中を見る傾向があるのか?後半生の人間関係の作り方にはどういう傾向があるのか?など、いろいろあります。

そうしたことを理解するために何が必要かを突き詰めると、究極は「人間を知ること」に行き着きます。

そのためには「シニア人間学」とでも呼ぶべき、高齢期の人間に対する深い理解と思いやりのある眼差しが不可欠なのです。

この記事を書いた人
村田 裕之

村田アソシエイツ株式会社代表取締役、東北大学加齢医学研究所スマート・エイジングセンター特任教授

日本の中高年向け事業開発プロデューサー、起業家、社会学者。専門は中高年を対象とした事業開発と消費行動分析、日本と諸外国の高齢社会研究、スマート・エイジング論など。

1999年に日本で初めて「アクティブシニア市場」の重要性を指摘し、情報武装した高齢者「スマートシニア」の出現を予言した。2004年に「シニアビジネス」という言葉を初めて公に提唱し、女性専用フィットネス「カーブス」の日本への紹介、NTTドコモ「らくらくホン」の商品開発支援、関西大学とのカレッジリンク型シニア住宅の創成など、950以上の企業の事業開発に携わっている。日本におけるシニアビジネス分野の第一人者として知られている。

2006年に東北大学からの依頼でスマート・エイジングのコンセプトを提唱し、2009年10月東北大学スマート・エイジング国際共同研究センターの設立に参画。スマート・エイジング・カレッジを11年間主宰し、市民の健康リテラシーの向上とのべ406社との産学連携を推進してきた。

シンガポールに拠点を置く Asia Pacific Eldercare Innovation Awardsにより2018年5月に「Global Ageing Influencers」に、2024年5月に「Super Ageing Japan Outstanding Entrepreneur(スーパー・エイジング・ジャパン卓越起業家)」に選ばれた。

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