商品を売りたいなら、商品体験を売る

ビジネス切り口別
ブルーベリーフィールズ紀伊國屋の内観

高齢者住宅新聞連載 村田裕之の「シニアビジネス相談室」第56回

無農薬有機栽培とレストランを融合

滋賀県大津市にあるレストラン「ブルーベリーフィールズ紀伊國屋」は無農薬有機栽培で生産したブルーベリーやハーブを使用したジャムや紅茶などを販売する傍ら、そこの畑で栽培している野菜を生かしたヘルシーな料理をフルコースで提供するお洒落なフレンチレストランです。

レストランからブルーベリー畑が一望できる

場所は、大津市郊外の小高い傾斜地にあり、レストランはランチのみの提供です。二階建ての建物のうち、一階は自家製の小麦を使った焼きたてパン屋やブルーベリーやハーブ、バラを使ったジャム、紅茶などの販売店で、二階がレストランとなっています。

レストランはテーブル数が六つ程度で、小ぢんまりとしていますが、バンガロー風のインテリアで、床や天井、壁に使用している木材が上質で、オーガニックな雰囲気をかもし出しています。

席に座ると壁一面の大きなガラス窓をとおして、目の前にブルーベリー畑から、遠く琵琶湖の風景まで一望できるのです。

来店客のほとんどは中高年の女性グループで、このレストランで食事をするのが楽しみで、はるばる東京からやってくる年配女性も多いとのことです。

食材を売るのに食材を楽しむ空間を売る

有機食材を使った料理を売るのに料理だけを提供するのではなく、有機食材料理を楽しんで味わえるインテリアと眺望のある空間体験を提供しています。

すると、食事を楽しんだ後に、一階の店舗でパンを買ったり、ブルーベリーのジャムを買いたくなったりするのです。

仮にこれらの商品が普通のスーパーマーケットに横並びに陳列されていたなら高いと感じるかもしれません。しかし、ブルーベリーフィールズという空間では、多少高めでも買う気になるのです。

この例が私たちに示しているのは、顧客にとっての「商品体験」の価値が高いと、商品の価値も高くなる、つまり商品の価格が多少高くても売れるのです。

商品は食べてしまえば残りません。しかし、商品体験は人の心に残るという性質があります。だから、商品を売りたいなら、商品体験を売ることが大切なのです。

この記事を書いた人
村田 裕之

村田アソシエイツ株式会社代表取締役、東北大学加齢医学研究所スマート・エイジングセンター特任教授

日本の中高年向け事業開発プロデューサー、起業家、社会学者。専門は中高年を対象とした事業開発と消費行動分析、日本と諸外国の高齢社会研究、スマート・エイジング論など。

1999年に日本で初めて「アクティブシニア市場」の重要性を指摘し、情報武装した高齢者「スマートシニア」の出現を予言した。2004年に「シニアビジネス」という言葉を初めて公に提唱し、女性専用フィットネス「カーブス」の日本への紹介、NTTドコモ「らくらくホン」の商品開発支援、関西大学とのカレッジリンク型シニア住宅の創成など、950以上の企業の事業開発に携わっている。日本におけるシニアビジネス分野の第一人者として知られている。

2006年に東北大学からの依頼でスマート・エイジングのコンセプトを提唱し、2009年10月東北大学スマート・エイジング国際共同研究センターの設立に参画。スマート・エイジング・カレッジを11年間主宰し、市民の健康リテラシーの向上とのべ406社との産学連携を推進してきた。

シンガポールに拠点を置く Asia Pacific Eldercare Innovation Awardsにより2018年5月に「Global Ageing Influencers」に、2024年5月に「Super Ageing Japan Outstanding Entrepreneur(スーパー・エイジング・ジャパン卓越起業家)」に選ばれた。

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