高齢の親とのオンライン面会は「ちかく」が最適

離れて暮らす私と親にちょうどいい。 会話と気軽な見守りサービス。 商品・サービス別
離れて暮らす私と親にちょうどいい。 会話と気軽な見守りサービス。

シルバー産業新聞 連載「半歩先の団塊・シニアビジネス」第205回 

「デジタル近居」という新たな価値を提供する

NTTドコモとベンチャー企業のチカクが、離れて暮らす親子を対象にしたデジタル近居サービス「ちかく」を開始する。本稿が出る頃には全国のドコモショップで購入できることだろう(5月14日より全国のドコモショップで発売開始となっている)。

従来の近居もデジタル近居も、同居ではない「気楽さ」がメリットだ。また、従来の近居では、いざという時にすぐに会える距離に住んでいることの「安心感」「利便性」もメリットだ。

「ちかく」は専用の家型端末を家庭用テレビと電源コンセントにつなぐだけで、家庭用テレビがテレビ電話になり、見守りサービスにもなるものだ。

一方、デジタル近居では、いざという時にすぐに会える距離に住んでいなくても、デジタル技術によって「まるで近くに暮らしているかのように」、気軽にコミュニケーションや安否確認ができ、従来の近居とは異なる「安心感」「利便性」を提供する。

「ちかく」のターゲット利用者は、離れて暮らす親子だが、私はこのサービスは、病院に入院または老人ホーム・介護施設に入居している親との「オンライン面会」に最適だと思う。理由は次の2つだ。

理由1:ITが不得手な老親や施設スタッフでも簡便に使える

理由の1つ目は、親(または操作する施設スタッフ)側は、家庭用のテレビで簡単に操作できることだ。冒頭に述べた通り、家型端末をつなぐだけで普通のテレビがテレビ電話になる。

「ちかく」の家型端末で普通のテレビがテレビ電話に
「ちかく」の家型端末で普通のテレビがテレビ電話に

ITやネットを使えない高齢の親でも少なくともテレビは使えるだろう。しかも、親側にはWi-Fi・インターネット環境をつくる工事・作業が一切不要なのだ。

この「ちかく」の話を自分の周りの人たちにすると「テレビ電話なら、今はLINEビデオで簡単にできるのでは?」という声が返ってくる。スマホを使い慣れている人どうしなら、それでもよいだろう。

しかし、スマホを持っていない人、持っていても使うのが苦手な人もまだまだいる。「ちかく」は、ITに疎い人にとっては、家庭用テレビ中心の道具なので使いやすい。

また、子供とテレビ電話をしたい時はテレビのリモコンのボタンを押すだけでよいこの簡便さは他社製のテレビ電話にはない大きな利点だ。

理由2:大画面でのやりとりで親が子を「よりリアルに」感じる

スマホやタブレット、PCよりも臨場感ある映像で対話できる
スマホやタブレット、PCよりも臨場感ある映像で対話できる

理由の2つ目は、テレビの大画面で見ると、スマホやタブレット、パソコンで見るのに比べ「映像に臨場感が出る」ことだ。実はこれがかなり重要だ。

この点は私自身の体験をお話ししたい。コロナ禍の真っただ中に母が入居していた特養が、厳しい面会制限による不便を少しでも緩和したいとのことでLINEビデオによるオンライン面会を始めた。事前予約制で1回の面会時間は10分程度と言われたが、早速申し込んだ。

面会時刻となり、こちらからスマホのLINEビデオで相手先を呼び出すと、施設の介護スタッフがタブレット(iPad)で応答し、そばにいる母との「面会」が始まった。

施設入居の母との「オンライン面会」は面会にならなかった

こちらのスマホ画面に映し出された母に向かって呼びかけるが、私のことを全く認識してくれない以前対面で面会した際はしっかり認識していたのだが、今回は認識してくれない。

何度も何度も大声で呼びかけるが、母は怪訝そうな表情をして「何でや、これ(これは何か)?」と言うのみだ。

結局、母は最後まで私のことを認識できず、わずか数分で貴重な「オンライン面会」を終了した。

「面会」の一か月半後に母は亡くなった。この「面会」が生前の母との最期の対面になるとは、その時は予想もしなかった。

最初で最後のオンライン面会の時に、仮に施設側がタブレットではなく、大画面テレビで私のことを映してくれていたなら、もしかして母は私のことを認識したのではないか。そうした疑問が残ったが、2年以上前の当時は代替手段がなかった。

現在、コロナ禍はほぼ収まったものの、他の感染症対策のために、病院や一部介護施設では相変わらず面会制限が続いている

病院や介護施設は「ちかく」を活用してオンライン面会を行えば、利用者と家族から何よりも喜ばれると心底から思う。

離れて暮らす親子にちょうどいいデジタル近居サービス「ちかく」 | 村田裕之の団塊・シニアビジネス・シニア市場・高齢社会の未来が学べるブログ
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この記事を書いた人
村田 裕之

村田アソシエイツ株式会社代表取締役、東北大学加齢医学研究所スマート・エイジングセンター特任教授

日本の中高年向け事業開発プロデューサー、起業家、社会学者。専門は中高年を対象とした事業開発と消費行動分析、日本と諸外国の高齢社会研究、スマート・エイジング論など。

1999年に日本で初めて「アクティブシニア市場」の重要性を指摘し、情報武装した高齢者「スマートシニア」の出現を予言した。2004年に「シニアビジネス」という言葉を初めて公に提唱し、女性専用フィットネス「カーブス」の日本への紹介、NTTドコモ「らくらくホン」の商品開発支援、関西大学とのカレッジリンク型シニア住宅の創成など、950以上の企業の事業開発に携わっている。日本におけるシニアビジネス分野の第一人者として知られている。

2006年に東北大学からの依頼でスマート・エイジングのコンセプトを提唱し、2009年10月東北大学スマート・エイジング国際共同研究センターの設立に参画。スマート・エイジング・カレッジを11年間主宰し、市民の健康リテラシーの向上とのべ406社との産学連携を推進してきた。

シンガポールに拠点を置く Asia Pacific Eldercare Innovation Awardsにより2018年5月に「Global Ageing Influencers」に、2024年5月に「Super Ageing Japan Outstanding Entrepreneur(スーパー・エイジング・ジャパン卓越起業家)」に選ばれた。

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