シニアの健康管理で重要な計測項目とは?

ビジネス切り口別
「ゆびさきセルフ測定室」での血液検査

高齢者住宅新聞連載 村田裕之の「シニアビジネス相談室」第62回  

現状のヘルスケアアプリの多くは中途半端

少し前にある企業A社から「シニアの健康管理上、重要な計測項目は何か?」と尋ねられました。A社はスマートフォンで利用する自社独自のヘルスケアアプリを開発し、これまで法人従業員向けにサービス提供していました。

アプリで扱っているデータは独自仕様の体組成計とスマホから得られるデータの一部でした。冒頭の質問に対する私の答えは「血圧」「糖尿病」「脂質異常症」でした。

要介護になる原因の第一位が脳卒中であり、それは動脈硬化から生じます。動脈硬化を進行させる主要因は、①高血圧、②糖尿病、③脂質異常症、④肥満です。

このため、対象がシニアの場合、健康管理の目的を介護予防だとすれば、①から④の数値管理が必須です。

体組成計からは④の肥満に関するデータ(体重、BMI、体脂肪、内臓脂肪)は得られます。しかし、①から③のデータは得られません。

スマホから得られるデータは歩数データのみです。スマートウォッチと連携しても得られるデータは歩数、心拍数、血中酸素濃度などで、やはり①から③は得られません。これでは「シニアの健康管理」のためのアプリとしてあまり用をなしません。

血液検査の低価格化と測定精度向上が課題

高血圧を予防するためには毎日の血圧測定が重要です(連載第46回で説明済)。これには血圧計が必要です。

現状では国内の血圧計メーカーはA社のような他社製のアプリとのデータ連携を許可していないので血圧計で測定したデータをA社のアプリに手入力する必要があります。

一方、糖尿病と脂質異常症の管理には血液検査が必要で、病院かクリニックに行く必要があります。血液検査は、3割負担の場合、一回4,000円程度かかります。

一部薬局には「ゆびさきセルフ測定室」というサービスがあり、病院での血液検査よりも手軽な計測で、糖尿病数値である血糖値とHbA1c、血中脂質関連数値である中性脂肪、LDL(善玉)コレステロール、HDL(悪玉)コレステロールの値を測れます。ただし、現状では測定精度に課題があり、改善が求められます。

この記事を書いた人
村田 裕之

村田アソシエイツ株式会社代表取締役、東北大学加齢医学研究所スマート・エイジングセンター特任教授

日本の中高年向け事業開発プロデューサー、起業家、社会学者。専門は中高年を対象とした事業開発と消費行動分析、日本と諸外国の高齢社会研究、スマート・エイジング論など。

1999年に日本で初めて「アクティブシニア市場」の重要性を指摘し、情報武装した高齢者「スマートシニア」の出現を予言した。2004年に「シニアビジネス」という言葉を初めて公に提唱し、女性専用フィットネス「カーブス」の日本への紹介、NTTドコモ「らくらくホン」の商品開発支援、関西大学とのカレッジリンク型シニア住宅の創成など、950以上の企業の事業開発に携わっている。日本におけるシニアビジネス分野の第一人者として知られている。

2006年に東北大学からの依頼でスマート・エイジングのコンセプトを提唱し、2009年10月東北大学スマート・エイジング国際共同研究センターの設立に参画。スマート・エイジング・カレッジを11年間主宰し、市民の健康リテラシーの向上とのべ406社との産学連携を推進してきた。

シンガポールに拠点を置く Asia Pacific Eldercare Innovation Awardsにより2018年5月に「Global Ageing Influencers」に、2024年5月に「Super Ageing Japan Outstanding Entrepreneur(スーパー・エイジング・ジャパン卓越起業家)」に選ばれた。

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