高齢者住宅新聞連載 村田裕之の「シニアビジネス相談室」第31回
商品の「低価格」を訴求する例が増えている
拙著「シニアビジネスの教科書」でも述べている通り、シニアの資産構造の特徴は「ストック・リッチ、フロー・プア」。つまり、いざという時のために資産は多くため込んでいるが、日々の生活では節約志向が強い。
これを受けてか、スーパーなどの小売店では商品の「低価格」を訴求する例が多く見られます。
大手スーパーのイオンでは「トップバリュ」のマークを付けて、同じ製品ならナショナルブランドよりもかなり安く売っています。
例えば「バーリアル」という発泡酒は、ほとんどビール並みの味と品質にもかかわらず、500ミリリットルで110円(税込)。ビールなら290円はするので、かなり安い。食料品や日用品の場合はこうした価格設定は付加価値として受け入れられます。
女性専用フィットネス「カーブス」が市場に受け入れられた理由の一つに価格があります。フィットネスクラブでのそれまでの市場価格の相場がひと月1万円だったところ、市場参入当時5,700円という半額近い価格で提供したからです。
もちろん、その価格で十分効果が出ることが認知されたので全国で86万人もの女性が利用するようになったのですが、品質が同等なら価格が安いことが高付加価値になる例です。
価格が安いことが高付加価値にならない例
ところが、こうした価格設定が当てはまらない例もあります。例えばワインの場合、かなり品質の良いボルドー産ワインでも先の「トップバリュ」のマークが付くと、逆に安っぽく見えてしまい、かえって売れないということが起きます。
ワインのような嗜好性の強い製品は、価格が安いというだけでは売れないからです。こういう製品は「高級品だが割安」というのが、目の肥えたシニア顧客に求められる価値なのです。
このような、シニアの消費性向に対する誤った思い込みで機会損失を生み出している例が市場に多く見られます。
その製品の価格が安いということと、その製品が安っぽく見えることとは、まったく違うということを肝に銘じましょう。