吉野家「特保」冷凍牛丼の具「トク牛」が10万食突破 その理由は?

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吉野家の冷凍牛丼の具「トク牛 サラシアプレミアム」

2023年9月22日 日経MJ連載 納得!シニア消費

トク牛利用者は50歳以上が半数以上で、60代前半が最も多い

吉野家の冷凍食品で牛丼の具「トク牛 サラシアプレミアム」が中高年に好評だ。2022年7月発売以来の累計販売数が1年余りで10万食を突破した。

実はこの商品は外食チェーン初の特定保健用食品(トクホ)だ。同社によれば、数多あるトクホのなかでも異例のヒットとのこと。利用者の年齢層は50歳以上が半数以上で、60代前半が最も多い。なぜ、中高年に受けているのか?

1.食後の血糖値上昇を緩やかにすることがトクホで認められた点

理由の1つ目は、食後の血糖値上昇を緩やかにすることがトクホの制度で認められた点。大阪府の木村知美さん(仮名、60歳)は「血糖値が高めで、日常生活で糖質を減らしている。もう牛丼は無理とあきらめていたが、トクホの新商品があると聞いて、食べてみたら本当に懐かしくて嬉しかった」と言う。

一般に牛丼に対しては、美味(おい)しいが牛肉に脂身が多い、糖質が多い、野菜が少ないなど、不健康な食べ物のイメージを持つ人が少なくない。このため、糖尿病などで血糖値管理が必要になると避けられる傾向があった。

こうした背景から、同社では糖の吸収を減らし、食後の血糖値上昇を緩やかにする「サラシノール」という成分を牛丼の具に配合した。有効性や安全性が科学的に証明済で、血糖値が高めの人でも安心して食べられる点が受けている。

2.「健康に良い」食品はまずいものが多いがトク牛は「美味しい」点

理由の2つ目は、「健康に良い」とうたう食品は、一般に味が今一つのものが多いが、トク牛は「美味しい」点。広島県の佐々木健司さん(仮名、69歳)は「血糖値が気になり購入した。体に良い食品は得てして味は期待できないのが今までの常識だったが、見事に破られた。こういうのを待っていた」と語る。

美味しさの秘訣はサラシノールと牛丼のタレにある。同社によれば、サラシノールをタレに加えるとコクが出て、牛丼の味に深みが出るとのこと。サラシノールの赤色が牛肉やタレの色に重なり、味が濃い目に見える点もミソだ。

開発段階では、牛丼一筋に携わってきたベテランの「味利き」社員が何度も試食を繰り返して、味を決めたとのこと。実際に食べてみると、老舗の牛丼チェーンならではの味へのこだわりが感じられる。

3.冷凍保存でき、レンジで温めれば店の味が楽しめる手軽な点

3つ目の理由は、冷凍保存でき、レンジで数分温めれば、店と同等の味がいつでも楽しめる手軽な点。岡山県の佐藤紀夫さん(仮名、63歳)は「自営業なので忙しく、メニューに困ったら、レンジでチンして食べられるのがよい。スーパーで売っているレトルト程度の味を想像していたが、それよりはるかに美味しい」と言う。

早い、うまい、そして「体によい」

かつて吉野家が急成長を遂げた1970年代のキャッチコピーは「早い、うまい、安い」だった。それから半世紀が経ち、「早い、うまい、体によい」が求められるようになった。人口のほぼ半数が50歳以上の超高齢社会となったことで、食に対する健康志向が一段と強まったからだ。

世の中には高血圧の人を対象にした「減塩食」が花盛りだ。だが、食べてみると高価な割に味が今一つのものが多い。これからの時代は「健康食品でも美味しい」ことが当たり前になるだろう。

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