森永乳業の大人向け粉ミルク 人気

森永乳業の大人向け粉ミルク「ミルク生活」 人気 商品・サービス別
森永乳業の大人向け粉ミルク「ミルク生活」人気

2023年3月24日 日経MJ連載 納得!シニア消費

利用者の7割が60歳以上、店頭での市場シェア90%

「粉ミルク」といえば多くの人は赤ちゃん向けのものと思うだろう。ところが、森永乳業「大人のための粉ミルク」とうたっている「ミルク生活」はシニアに人気だ。

粉ミルクにもかかわらず、一般の牛乳には含まれていないラクトフェリン、ビフィズス菌、シールド乳酸菌、11 種類のビタミン、食物繊維などの栄養分が含まれている。

同社によると利用者の7割が60歳以上で、男女比率は80%が女性店頭での市場シェアは90%以上とのこと。なぜ、シニアに受けているのか?

少量の摂取でシニアに必要な栄養分がまとめて摂れる

理由の一つ目は、1回20グラムの摂取でシニアに必要な栄養分がまとめて摂れることだ。埼玉県の佐藤和子さん(仮名、75歳)は「昨年の健康診断で栄養不足と言われ体が心配だったが、半年前に店頭で高たんぱく、高カルシウム入りの『ミルク生活プラス』を見つけてから飲み続け、今ではすっかり栄養状態も良くなった」と語る。

高齢になるにつれ様々な理由で食が細る人が増える。加齢に伴い筋肉量が減少する「サルコペニア」と呼ばれる現象は、要介護になる原因の一つだが、その主因がたんぱく質の摂取不足であることがわかっている。さらに女性は閉経後に骨粗しょう症になりやすいとされ、男性に比べて転倒時に骨折しやすくなる。

こうした背景から「ミルク生活プラス」では、「ミルク生活」の成分のうち、たんぱく質と骨の形成に必要なカルシウムの量を増やしている。これがシニア女性の健康不安解消ニーズにマッチしているのだ。ミルク生活プラスとミルク生活の売上構成比が65対35なのは、この点を反映していると言えよう。

ミルクなのに牛乳臭くなく、牛乳が苦手な人でも飲みやすい

二つ目は、ミルクなのに牛乳臭くなく、牛乳が苦手な人でも飲みやすいこと。神奈川県の小林春香さん(仮名、68歳)は「乳製品が苦手で牛乳は全然飲めないが、少しでもカルシウム等の栄養を摂りたく毎日飲んでいる。臭いもなく大変飲みやすい」という。

牛乳を飲める人でも粉ミルクに先入観を持つ人は少なくない。特に子供の頃に学校給食で臭くてまずい脱脂粉乳を飲んだ経験のある人はそうだ。だが、実際にミルク生活を飲んだ人は、くせのない飲みやすい味で意外に思うようだ。

粉末のため軽量で、常温で長期間保存できる点も受けている。高齢になると買い物時に重いものを運ぶのが苦痛になる。また生乳1リットルパックは短期間しか保存できないため、小食のシニアには買いにくい。

普段の食事では摂りにくい栄養成分が少量でも摂れてコスパを感じさせる

ロシアによるウクライナ侵攻と円安による物価高で消費者はますます価格に厳しくなっている。実は本当に厳しくなっているのは、価格ではなく「コスパ(費用対効果)」だろう。

加齢に伴い不足するが普段の食事では摂りにくい栄養成分を少量でも必要分摂れる利便性がコスパを感じさせ、納得性を高めている。

2012年に出版した拙著「シニアシフトの衝撃」人口の年齢構成が高齢者中心にシフトすることで産業構造が変わると述べた。

実際その年に大人用紙おむつ市場が1500億円を超え、赤ちゃん用市場を逆転した。大人用粉ミルク市場が赤ちゃん用粉ミルク市場を超える日は、そう遠くないかもしれない。

成功するシニアビジネスの教科書

 

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