高齢者住宅新聞連載 村田裕之の「シニアビジネス相談室」第64回
長引くコロナ禍に加え、ロシアのウクライナ侵攻と円安による物価高で先行き不安感が増大し、精神的なストレスを感じる人が増えているようだ。
こうした状況のせいか、「リラックス」を効能としてうたう商品・サービスが増えている。「リラクゼーションマッサージ」「リラクゼーションドリンク」など枚挙にいとまがない。
だが、こうした商品・サービスで利用者が本当にリラックスできているのか、その信憑性が曖昧なものが多い。
リラックスできているかは自律神経の状態でわかる
実は私たちがリラックスできているかどうかは、私たちの体の情報で科学的に評価できる。代表的なのは自律神経の状態を「心拍変動」から評価する方法だ。
自律神経には交感神経と副交感神経の二つがあり、ストレス状態では交感神経が優位となり、リラックス状態では副交感神経が優位となる。
心拍変動とは心電図で見られる心拍間隔の周期的な変動をいう。これには呼吸変動に対応する高周波変動(HF)と、血圧変動に対応する低周波変動(LF)が含まれる。
リラックス状態にはHF成分とLF成分が現れる。ところがストレス状態には、LF成分が現れるがHF成分が減少する。この原理を用いてリラックスしているかを評価できる。
リラックス状態を可視化する技術でエビデンスを取得
私が役員を務める東北大学ナレッジキャストと東北大学らによるハイテクベンチャー、NeUとで美容室のヘッドスパ施術でどれだけリラックスできるか検証した。
化粧品販売を行うイーラルが開発したオイルマッサージとシャンプーによるヘッドキュアと呼ぶ独自の施術を対象にした。施術を受けている利用者のストレス指標(LF/HF)が徐々に低下し、リラックスしていく傾向が統計的有意に見られる(図)。
ヘッドスパ施術を提供する美容室は数多くあるが、施術のリラックス効果を科学的に検証した例はこれまでほとんどなかった。
リラックス状態を可視化する技術でエビデンスを取得して効果の信憑性を示すことで顧客の信頼を得られやすくなるだろう。