“きちん”とした脳トレは認知機能を改善する

ビジネス切り口別

高齢者住宅新聞連載 村田裕之の「シニアビジネス相談室」第22回

重度の認知症を患った人でも脳機能が改善して日常生活に戻れる

認知症予防」という言葉を近年よく耳にするようになりました。認知症が「痴呆」と呼ばれていた頃は、一度症状が出ると、予防どころか改善すら不可能と思われていました。

ところが、東北大学 川島隆太教授らの研究で科学的な方法で脳のトレーニングを“きちんと”行なえば、たとえ重度の認知症を患った人でも脳機能が改善して日常生活に戻れることが分かってきました。

これは学習療法として日本の多くの老人ホーム、介護施設で実践されているほか、アメリカの10の州、27施設でも実践されています。

理論的な話を少しすると、トレーニングによって脳の神経細胞同士のつながりが強化され、体積が増えるほか、脳を形作る電気的な回路の働きも活発になります。

嬉しいことに、これは何歳になっても、きちんとやれば効果が出ます。つまり、脳はよい状態を維持できることが、最新の脳科学研究によって見えてきたのです。

認知症予防効果が科学的に認められているのは有酸素運動

一方、どんなトレーニングを行なえば認知症の予防につなぐことができるのでしょうか。現段階で明らかに言えるのはウォーキングなどの「有酸素運動」です。これには認知症の予防効果があることが研究データから分かっています。

しかし、有酸素運動以外のトレーニングについては、まだその効果を確かなものだと断言することはできません。

東北大学の研究では「疫学」の考え方に基づいて効果などを見定めています。疫学とは、様々な人間の集団を追跡調査することで、生活習慣と身体の異変との因果関係などを調べる学問のことです。

追跡調査には長い期間が必要なので、ほとんどのトレーニング手法は、まだ疫学的に十分なデータが揃っていないのです。

このため、私たちは認知機能改善の効果が「ありそうだ」としか言えません。しかし、トレーニングで認知機能が改善した実例は沢山あるので、少なくとも無意味ではないと考えています。

この記事を書いた人
村田 裕之

村田アソシエイツ株式会社代表取締役、東北大学加齢医学研究所スマート・エイジングセンター特任教授

日本の中高年向け事業開発プロデューサー、起業家、社会学者。専門は中高年を対象とした事業開発と消費行動分析、日本と諸外国の高齢社会研究、スマート・エイジング論など。

1999年に日本で初めて「アクティブシニア市場」の重要性を指摘し、情報武装した高齢者「スマートシニア」の出現を予言した。2004年に「シニアビジネス」という言葉を初めて公に提唱し、女性専用フィットネス「カーブス」の日本への紹介、NTTドコモ「らくらくホン」の商品開発支援、関西大学とのカレッジリンク型シニア住宅の創成など、950以上の企業の事業開発に携わっている。日本におけるシニアビジネス分野の第一人者として知られている。

2006年に東北大学からの依頼でスマート・エイジングのコンセプトを提唱し、2009年10月東北大学スマート・エイジング国際共同研究センターの設立に参画。スマート・エイジング・カレッジを11年間主宰し、市民の健康リテラシーの向上とのべ406社との産学連携を推進してきた。

シンガポールに拠点を置く Asia Pacific Eldercare Innovation Awardsにより2018年5月に「Global Ageing Influencers」に、2024年5月に「Super Ageing Japan Outstanding Entrepreneur(スーパー・エイジング・ジャパン卓越起業家)」に選ばれた。

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