高齢者住宅新聞連載 村田裕之の「シニアビジネス相談室」第101回
深刻化する「デジタル・ファイナンシャル・デバイド」
IT機器の普及に伴いシニア層の「デジタル・デバイド(デジタルによる格差)」が広がると長らく言われてきました。
いま新たに広がっているのは「デジタル・ファイナンシャル・デバイド(デジタルによる金融格差)」です。
1月11日付日本経済新聞によれば、NISA(少額投資非課税制度)の人口比開設率は、東京都の32%に対して最下位の青森県は15%と差が開き、青森以外でも東北以北が下位になっています。
この差の原因として高齢化率の高さが挙げられています。高齢者は一般にネットでの資産運用に慣れていないためです。
インフレが加速させる「預金と年金」の目減り
インフレ時代になった日本では、物価が上がり続けるだけでなく、銀行預金の価値がどんどん目減りします。預金金利がインフレ率(2025年は約3.3%と予測)よりもはるかに低いためです。
一方、年金は物価変動に連動すると言われていますが、マクロ経済スライドによる調整が入るため、年金上昇率はインフレ率よりも小さくなります。つまり、年金もインフレに伴い目減りします。
これらの事情から、インフレ時代には銀行に多額のお金を長期に預けておくのは危険です。高齢者にはタンス預金を好む人が多いですが、金利がゼロのためにさらに危険です。
シニア層に求められる「対面での資産運用」
しかし、現時点でデジタル金融に慣れていない高齢層でも、いずれ資産運用の必要性に気づく人が増えるはずです。
そうした人は、パソコンやスマホでの運用が不得手ならば、手数料はかかりますが、最寄りの金融機関(証券会社を含む)の窓口で運用を任せる可能性が高いでしょう。
このため、金融機関はネットが不得手な高齢顧客との「対面接点」をいかに増やせるかが潜在顧客獲得のカギになります。こうした人達は対面による相談を求める傾向が強いためです。
期待される「出張相談」という新たな解決策
米国の高齢者住宅施設では、ATMの設置や銀行の出張所があり、週に数回担当者が来て利用者の相談に応じている例が見られます。
日本ではまだ見かけませんが、高齢者が大勢集まる場所には対面接点の需要が大きいでしょう。



