ゆこゆこ:ウィズコロナ時代の「ニューミドルマン」

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シニア向けオンライン旅行サイト「ゆこゆこ」

2022年11月25日 日経MJ連載 納得!シニア消費

ゆこゆこネット:国内最大級のシニア向けオンライン旅行サイト

ゆこゆこホールディングス(東京・中央)が運営するゆこゆこネット国内最大級のシニア向けオンライン旅行サイトだ。

会員数は791万人で、年間送客数約230万人泊に上る。利用者の年齢層は70代が22%、60代が18%、80代以上が13%、50代が13%と圧倒的にシニア層が多いのが特徴だ。

「ゆこゆこ」という名称の通り、温泉宿を中心に1泊2食付き・1人1万円前後の平日でお得な宿泊プランを多数用意。会員の90%が平日に宿泊し、59%が予定を合わせやすい夫婦で利用する。

シニアのインターネット普及率は年々上がっているものの、60代や70代以上では不得手な人も結構いる。それでも利用者が多いのには理由がある。

「お節介な」電話対応で顧客からの信頼厚く

その一つは「電話で細やかな相談」ができることだ。年輩利用者はネットでの検索閲覧はできても、宿泊施設の細かな状況を確認したい人やネット予約に不安を感じる人が多い

滋賀県長浜市の小林春子さん(仮名、64歳)は「高齢の母が車椅子なので、いつも電話で丁寧・親切に相談にのってくれてうれしい」という。

もう一つは、電話での対応時に良い意味での「お節介」を受けられること。例えば、宿泊先の部屋から食堂までの距離や大浴場までの階段数まで積極的に伝えてくれる。老舗の旅館では階段が長いこともあり、シニアにとってはかなりの負担となる。

京都市の鈴木哲夫さん(仮名、63歳)は「宿泊情報誌(ゆこゆこ)には書いてあるが把握していなかった点をナビゲーターが説明してくれて助かった」と話す。ゆこゆこを継続的に利用する理由として、こうした積極的な電話対応が大きい。

差異化の源泉はコールセンターの戦略的活用

これを可能にしているのが全国4か所にあるコールセンター。最大250ブースで1日最大7200件対応する。他のサービスがコスト削減でコールセンターを廃止したのと一見逆行するかに見える。

だが、これが会員からの信頼を厚くして他社と差異化する源泉なのだ。コロナ禍に見舞われた2020年以降も会員は増え続け、コロナに際し利用者から3日間で6000件を超える応援メッセージを受け取ったこともある。

宿泊情報誌「ゆこゆこ」もシニア層には有用だ。新宿区の永山博さん(仮名、73歳)は「巻頭の特集のページからペラペラ見て、良さそうな宿をネットで調べる。宿を決めたら妻が電話する」と話す。

ウィズコロナ時代の「ニューミドルマン」として存在価値を高める

筆者はよく「シニアには紙とネットとどっちがよいのか」などと尋ねられるが、結論はコールセンターも加えたマルチメディアによる対応が正しい。シニアと言っても人によってITリテラシーも身体の状態も異なる。

かつて電子商取引の黎明期に「ミドルマン(中間業者)は不要になる」と言われた。だが従来型の中間業者が消えた代わりに「ニューミドルマン(新しい中間業者)」が出現した。アマゾンなどはその典型だ。

コロナ禍で打撃を受けた旅行会社というミドルマンは新たな存在意義を求められている。ゆこゆこは従来の店舗型のハイタッチと、ネットの機能性を兼ね備えたウィズコロナ時代の「ニューミドルマン」として存在価値を高めそうだ。

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