高齢者住宅新聞連載 村田裕之の「シニアビジネス相談室」第32回
にんじんが嫌いな人はどのようにしてそうなるか?
アメリカのメネラという発達心理生物学者が、妊娠中の女性を集めて次の3つのグループに分け、実験を行っています。
グル-プ1:妊娠後期に、にんじんジュースを飲む
グル-プ2:授乳中に、にんじんジュースを飲む
グループ3:いずれの時期も、にんじんジュースを飲まない
この3つのグループの女性から生まれてきた乳児全員に、最初の離乳食として「にんじんシリアル」を食べさせたところ、次の通りとなりました。
グループ1の女性から生まれた乳児は、多くが最初からにんじんシリアルを食べた
グループ2の女性から生まれた乳児は、少し食べた
グループ3の女性から生まれた乳児は、ほとんど食べなかった
これらの理由は、胎児が子宮の中にいる間、つかっている羊水や生まれてから与えられる母乳に、母親が口にした食物の風味がついているため、子供もその食べ物の味を学習し、好感をもつからなのです。
にんじん嫌いの子供は多いですが、胎児の時にこのような学習をしている子供は、にんじん嫌いにはなりにくいと思われます。つまり、子供の偏食をなくすには、妊娠中の母親の食生活がかなり重要だということです。
食べ物の好き嫌いは、母親の食生活で大きく影響を受ける
この結果を別の角度から見ると、その人の食べ物に対する好き嫌いは、①その人が胎児の時の母親の食生活、②その人が授乳時の母親の食生活、の順に大きく影響を受けると考えられます。
この考え方に基づくと、その人の食べ物の嗜好性のベースを知るには、上記①②を知ることが重要となります。ところが、現実にはこれはなかなか容易ではありません。
一方、この考え方は、母親が妊娠している時と授乳している時に多く摂取する食べ物や飲み物が、子供の食べ物の嗜好性に影響することを意味します。
ということは、これらの時期の母親が多く摂取する食べ物や飲み物のシェアの大きいものが、その子供たちにも受け入れられやすいことが考えられます。
胎児の時の母親の食生活を押さることが、生涯マーケティングのカギといえます。