高齢者住宅新聞連載 村田裕之の「シニアビジネス相談室」第17回
大企業も事業開始はニッチ市場から
女性専用フィットネス「カーブス」の創業者ゲイリー・ヘブン氏は、参入当初、「中高年女性相手のフィットネスなんて、そんな特殊な市場はやめたほうがいいよ。おばさんたちは、わがままで、価格感覚も厳しくて、絶対うまくいかないよ」と多くの人に言われたといいます。
しかし、今では、日本を含む全世界50国で10000店舗以上開設し、400万人以上の中高年女性が利用する世界最大のフィットネス・チェーンとなりました。
また、シニア女性向け雑誌の「いきいき(現・ハルメク)」は、創業当時「暮らしの手帖」や「クロワッサン」といった、錚々たる雑誌が先行しているなかで、ありそうでなかった50歳以上の女性向けの生き方応援雑誌としてスタートしました。
創刊号はわずか174部しか売れませんでしたが「自分が読みたい雑誌がない」という人を中心に、次第に部数を伸ばし、この分野でトップの発行部数になりました。
一方、シニアビジネスではありませんが、パーク24(株)も似た例です。利用価値の低い都心の狭い「すきま」の土地を所有者から借り受け、駐車場を設置し、ドライバーに提供するビジネスで、日本最大の駐車場ネットワーク企業となったのです。
運だけではない新規事業の成功
これらの事例の共通点は、市場に「ありそうでなかったもの」を商品化し、競合他社があまりいないニッチ市場から参入して、事業を拡大したことです。
この話をすると「そうした企業は、うまくやりましたねえ」という人が結構います。
残念ながら、こういう見方をする人には新規事業の成功は無理でしょう。なぜなら、新規事業とは、多くの先発競合他社が居並ぶなかで、いかに事業の「差異化」を生み出し続けるか、の戦いの連続だからです。
そして、こうした差異化を考え続けていくと、多くの場合、ニッチ市場に行き着くのです。