味は「見た目」で大きく変わる

ビジネス切り口別
白の食器は料理の味をそのまま感じやすいので減塩食に向かない

高齢者住宅新聞連載 村田裕之の「シニアビジネス相談室」第10回

私たちは味をどのように感じるのか?

皆さんは食べ物や飲み物の「味」を感じる時、身体の「どこ」で感じていると思いますか?

ほとんどの方は「それは舌に決まっている」と答えるでしょう。少し詳しい人は「舌には味覚を感じる部位があり、そこで甘い、辛いなどを感じている。」と答えるでしょう。

しかし、こうした答えは正しくありません。

食心理学のパイオニア、東北大学の坂井信之教授によれば『味というのは「味覚」や「嗅覚(きゅうかく)」、「体性感覚」などを脳で統合して感じるもの』

つまり、味は舌だけで感じるものではありません。例えば、風邪をひいて鼻が詰まると食べ物の味がわからなくなるのはこれが理由です。

また、体性感覚には触覚、圧覚、温覚、冷覚、痛覚などがあります。先の回答に「舌が辛みを感じている」とありましたが、辛みは味覚ではなく、舌に感じる熱なので温覚なのです。

プロのワイン専門家でも見た目で間違える

ワインの味は器で変わる

フランスのボルドー大学大学院でワインの専門家を被験者にした実験が行われました。

まず、白ワインを飲んで味を評価してもらい、次に同じ白ワインに赤い色素を入れたものを飲み、味を評価してもらいました。すると、白ワインとして飲んだ時とは全く違う評価になったのです。

なぜ、プロのワイン専門家がこのような間違いをしたのでしょうか。

彼らはワインについての膨大な知識があるため、赤い色のワインを見ると、その中から一番近い「赤ワイン」の知識から類推しようとして間違えたのです。

この実験から言えるのは、人が感じる味は食べ物や飲み物の「見た目」に大きく影響を受けることです。

これらの知見を知っていると、高齢者向けのビジネスに有用です。例えば、焦がし醤油や焼いたベーコンの香ばしい香り、酢などを添加すると減塩食でも塩味をはっきり感じて美味しく食べられます。

その際おしゃれな器で「見た目」の美しい盛り付けをすれば「上品な味がする」などと感じられるようになります。

この記事を書いた人
村田 裕之

村田アソシエイツ株式会社代表取締役、東北大学加齢医学研究所スマート・エイジングセンター特任教授

日本の中高年向け事業開発プロデューサー、起業家、社会学者。専門は中高年を対象とした事業開発と消費行動分析、日本と諸外国の高齢社会研究、スマート・エイジング論など。

1999年に日本で初めて「アクティブシニア市場」の重要性を指摘し、情報武装した高齢者「スマートシニア」の出現を予言した。2004年に「シニアビジネス」という言葉を初めて公に提唱し、女性専用フィットネス「カーブス」の日本への紹介、NTTドコモ「らくらくホン」の商品開発支援、関西大学とのカレッジリンク型シニア住宅の創成など、950以上の企業の事業開発に携わっている。日本におけるシニアビジネス分野の第一人者として知られている。

2006年に東北大学からの依頼でスマート・エイジングのコンセプトを提唱し、2009年10月東北大学スマート・エイジング国際共同研究センターの設立に参画。スマート・エイジング・カレッジを11年間主宰し、市民の健康リテラシーの向上とのべ406社との産学連携を推進してきた。

シンガポールに拠点を置く Asia Pacific Eldercare Innovation Awardsにより2018年5月に「Global Ageing Influencers」に、2024年5月に「Super Ageing Japan Outstanding Entrepreneur(スーパー・エイジング・ジャパン卓越起業家)」に選ばれた。

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