居心地の良さは何で作られるのか?

ビジネス切り口別

高齢者住宅新聞連載 村田裕之の「シニアビジネス相談室」第9回

脳科学の知見が居心地の良い空間設計に役に立つ

前回、脳科学的な観点から多くのシニア向けカフェが苦戦したのかの理由を述べました。その理由がわかると、逆に居心地の良い空間をつくるにはどうすればよいかがわかってきます。

コメダ珈琲の内装

コメダ珈琲店は、なぜシニアに人気なのか?

例えば、シニアに人気のコメダ珈琲店は、ボックス型に区画が仕切られており、山小屋のような雰囲気で空間に凹凸が多くなっています。

凹凸が多いと、隠れたり寄りかかったりする場所が増えて落ち着くのと、話し声が適度に吸収・拡散しやすくなり、話しやすくなります。こういう空間は居心地がよいものです。

丸亀製麺で有名なトリドールが運営するコナズ珈琲は「ハワイの休日をイメージ」したアットホームな雰囲気が人気です。

コメダ珈琲のようにボックス型に区画が仕切られているわけではりませんが、多くの植栽やハワイアングッズが空間に凹凸をつくり、長居をしても違和感のないつくりです。

さらに、各テーブルに天井からぶら下がった白熱灯風の照明が、空間の凹凸感を助長しています。

独特の凹凸感が人気のカルディコーヒーファーム

珈琲豆と輸入食品を扱うカルディコーヒーファームも独特の凹凸感をもつ人気店舗です。店のディスプレイは緩やかな曲線状になっており、かつ天井に近い高いところまで商品が陳列されています。

曲線を多用した店舗デザインは西洋の図書館をイメージしたとのこと。スーパーやドラッグストアなどに多い直線的なディスプレイと異なり、買い手である人間との心理的距離感が近くなって、思わず手に取って見たくなる空間づくりになっています。

これらの店舗の設計者が脳科学的な知見をどれだけ持っていたかは知りませんが、こうした知見を予め知っていると、設計における試行錯誤の幅が少なくなり、商品・サービス開発が効率的になります。

高齢者施設においても認知症の人が居心地の良い空間をつくれば、介護従事者の負担が減ります。つまり、要介護者・介護従事者双方にとって有益になるのです。

この記事を書いた人
村田 裕之

村田アソシエイツ株式会社代表取締役、東北大学加齢医学研究所スマート・エイジングセンター特任教授、シンクタンク・ソフィアバンク アソシエイツ、エイジング・アジア国際アドバイザー、シンガポール工科デザイン大学 国際アドバイザー。

日本の中高年向け事業開発プロデューサー、起業家、社会学者。専門は中高年を対象とした事業開発と消費行動分析、日本と諸外国の高齢社会研究、スマート・エイジング論など。

1999年に日本で初めて「アクティブシニア市場」の重要性を指摘し、情報武装した高齢者「スマートシニア」の出現を予言した。2004年に「シニアビジネス」という言葉を初めて公に提唱し、女性専用フィットネス「カーブス」の日本への紹介、NTTドコモ「らくらくホン」の商品開発支援、関西大学とのカレッジリンク型シニア住宅の創成など、950以上の企業の事業開発に携わっている。日本におけるシニアビジネス分野の第一人者として知られている。

2006年に東北大学からの依頼でスマート・エイジングのコンセプトを提唱し、2009年10月東北大学スマート・エイジング国際共同研究センターの設立に参画。スマート・エイジング・カレッジを11年間主宰し、市民の健康リテラシーの向上とのべ406社との産学連携を推進してきた。

2004年に世界最大の高齢者NPO AARPがロンドンで開催した国際会議に、唯一の日本人パネリストとして招聘されて以来、スイスでの世界エイジング・世代問題会議にチェアマンとして招聘、シンガポール政府主催SICEX2008の基調講演者に招聘されるなど多くの国際的な活動に取り組んでいる。

シンガポールに拠点を置く Asia Pacific Eldercare Innovation Awardsにより2018年5月に「GLOBAL AGEING INFLUENCERS」に、2024年5月に「Super Ageing Japan Outstanding Entrepreneur(スーパー・エイジング・ジャパン卓越起業家)」に選ばれた。

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