シルバー産業新聞 連載「半歩先の団塊・シニアビジネス」第84回
これからシニアシフトは世界中に拡大していく
日本は世界一の超高齢社会。日本は高齢化が早いだけに、それに伴う課題やその解決に向けたビジネスチャンスの顕在化も早い。このため、日本はシニアビジネスの分野で世界のリーダーになれる可能性がある。
シニアビジネスは日本だけのビジネスではない。グローバル規模で顧客のライフサイクルにわたるビジネスになる。
新興国において、今は子ども向けの商品を販売し、そのうち高齢化が進んだら、日本のシニア市場で育んだ大人向けの商品を販売していけばよい。
十把一からげに捉えられないアジア市場、タイミングが重要
一方、アジアに目を転じると、近年消費が急速に増えており、若干勢いの衰えた新興国に代わって成長著しい地域になっている。そのアジア市場にも高齢化の波は確実に訪れてきている。
現在の市場はもちろんのこと、今後の急速な高齢化に伴う新たな市場と潜在的なビジネスチャンスは計り知れないものがある。
高齢化率でみると、アジアでは、香港、韓国、シンガポール、台湾が日本に続いている。これらの地域では貨幣価値換算した一人当たりGDPは、日本と同等かそれ以上の水準になっており、購買力は高い。
ところが、例えば香港の高齢者施設では、未だに大半が大部屋でプライバシーがほとんどないなど、高齢化への対応は遅れており、日本のサービスに対するニーズは高い。
とはいえ、アジアと言っても地理的にも広大で、高齢化の進展度合いや所得水準など国によって多種多様であり、十把一からげに捉えられない。
だから、日本企業がアジアに進出する際には、高齢化率やシニア人口の絶対数、所得水準や所得格差、退職年齢、人口分布などさまざまな要素を考慮し、どのような商品やサービスを、どのタイミングで、どの地域に投入すべきかを周到に考える必要がある。
良い現地パートナーとの出会いがカギ
海外市場への進出の際に何よりも重要なのは、こうした状況を的確に把握することと、良い現地企業とパートナーを組むことだ。しかし、これがなかなか容易ではない。
私が非薬物療法の認知症療法である学習療法をアメリカへ持ち込んだ時に現在のパートナーに巡り合うまでに一年半かかった。時間だけでなく、広いアメリカ大陸を何度も東西に横断し、多くの人たちへのプレゼン、打合せに手間暇を要した。
素晴らしいパートナーと出会えたので結果は良かったが、本来はもっと効率的な方法をとるべきだった。
その効率的な方法の一つが、興味を同じくする大勢のキーパーソンが集まるイベントでプレゼンテーションすることだ。
興味深いテーマで発表すると、注目され、発表後に多くの人が名刺交換にやってくる。その後、個別会談をいくつか行えば、極めて短時間にキーパーソンと人脈ができ、深い内容の情報交換ができる。
各国のキーパーソンが一堂に会するAgeing Asia Investment Forum
問題は日本を含むアジアではシニアビジネスをテーマにしたイベントがまだ少ないことだ。しかし、毎年4月にシンガポールで開催され、私も毎年参加しているAAIF (Ageing Asia Investment Forum)は、数少ないシニアビジネスをテーマにしたイベントである。
私はアジア以外の米国や欧州でも多くの類似イベントに数多く参加した経験がある。その経験から確実に言えることは、こうしたハイレベルなビジネスパーソンが一同に会するイベントは、情報収集と人脈構築のうえで、最も効率的な方法であることだ。
わずか数日のAAIFに参加することで、アジアのさまざまな国の企業経営者、政府関係者、NPOリーダーとの人的ネットワークが構築できる。
そして、多くの意見交換機会や食事会、ツアーを通じてマスメディアやネットでの情報では決してわからない現地の生情報を極めて短期間に入手できる。
今年のAAIFは4月1日から2日まで。アジア、米国、オランダなど20か国から専門家が参加し、事例発表と討論を行う。加えて3月31日にはシンガポールの高齢者施設ツアー、4月3日はオランダで世界初の認知症居住者村を立ち上げたヘーグヴェイ社によるマスタークラス、4日はマレーシアに高齢者施設ツアーが予定されている。