シルバー産業新聞 連載「半歩先の団塊・シニアビジネス」第233回
相続税課税者は2015年改正で急増
財務省のホームページで年間死亡者数当りの相続税の課税件数割合の推移を見ると、2014年以前は4%前半だったのが、2015年以降に急増し、2024年には10.4%つまり10人当たり1人以上に達している。
急増した理由は、2015年の改正相続税法の施行で、非課税枠である「基礎控除額」がそれまでの6割の水準に引き下げられたためだ。
法改正前は、相続税は一部の富裕層の話と思っていた人も多いようだ。だが、もはや相続税は他人事ではなくなったのだ。
さらに今後の高齢者増に伴う死亡者増を考慮すると、相続税対策のニーズはますます増えると予想される。
そこで、今回から数回に分けて、相続税の勘所と2次相続までを考慮した相続税対策の現状を解説したい。
なぜ対策が難しいのか?「生前対策」が鍵を握る理由
相続税とは、亡くなった人(被相続人)からお金や土地などの財産を受け継いだ人(相続人)にかかる税金である。相続税対策とは、相続税額を合法的に下げる、つまり節税するための対策である。
相続税対策がややこしいのは、相続税の支払者が相続人(配偶者・子など)にも関わらず、対策の多くを被相続人(親など)が生きているうちに行う必要があるためだ。
まずは計算!自分の財産が「基礎控除額」を超えるか
相続税は、図1③の「課税価格」から、④「基礎控除額」を差し引いた「課税遺産総額」がプラスの場合、課税される。その場合、相続税の申告が必要となる。基礎控除額は、次の計算式で決まる。
基礎控除額=3,000万円+600万円×法定相続人の数
例えば、相続人が「被相続人の配偶者と子2人」の場合、法定相続人の数が3人のため、基礎控除額は4,800万円(3,000万円+600万円×3人)となる。
したがって、この場合、課税価格のうち4,800万円を超えた分(課税遺産総額)に相続税がかかる。逆に言えば、課税価格が4,800万円以下であれば相続税はかからず、相続税の申告は必要ない。
ご自身の財産が「法定相続人数で決まる基礎控除額を超えたら相続税がかかる」と覚えておきたい。
「配偶者控除でゼロ」の落とし穴 — 2次相続を見据えた対策を

図2は相続税の一般的な計算手順だ。例えば、被相続人の財産1億円を配偶者が8,000万円、長男・長女が1,000万円ずつ相続した場合、相続税は、配偶者0円、長男・長女各63万円となる。
ここで相続税額は、法定相続分に応じた所得金額で定まる税率と控除額に従っている。ただし、この例では「配偶者の税額軽減」のみ適用があったとして計算している。
配偶者の税額軽減とは、被相続人の配偶者が相続や遺贈により取得した遺産額が、「1億6,000万円」または「配偶者の法定相続分相当額」のどちらか多い金額までは配偶者に相続税がかからない優遇制度である。
この適用を受けるためには、配偶者は相続税の申告書を被相続人の住所地の所轄税務署に提出する必要がある。
この例の場合、配偶者の税額軽減の適用以外に何の対策をしなくても、長男・長女はそれぞれ税引き後937万円(1,000万円マイナス63万円)を受け取れることになる。
被相続人である親の立場では、これでよいと思うかもしれないが、相続人である長男・長女の立場では63万円の相続税をもっと減らしたいと思うかもしれない。
一方、この優遇制度を適用すると、その後、配偶者が亡くなった時に長男・長女に課税される相続税の金額が大きくなる可能性がある。
相続人の相続税負担を最小化するには、最初の相続(1次相続)と次の相続(2次相続)での相続税をいくつかの場合毎に比較検討して総合的に対策を講じる必要がある。
次回は国税庁のアプリを使って自分の財産にかかる相続税を算出する方法を説明する。



