2022年9月23日 日経MJ連載 納得!シニア消費
30分で完了する点が男性にも好評な理由
カーブスと言えば国内1,947店舗(5月末現在)を展開する女性専用フィットネスだが、この男性版があることをご存じだろうか。
男性向け「メンズ・カーブス」は2019年に長野県茅野市に一号店が開始。22年9月末で12店舗になり、10月にはさらに2店舗追加予定だ。コロナ禍で縮小気味のスポーツジム市場において堅調な事業展開と言えるだろう。
長野県在住の鈴木浩さん(仮名、62歳)は「通常のジムだと着替えも含めて1時間半はかかるが、ここだと30分で全てが終わるのがいい」と語る。
有酸素運動、筋トレ、ストレッチのプログラムが30分で完了する点が好評な理由の1つだ。
05年にカーブスが日本に登場した時、大変注目され、筆者が講演などで紹介すると「男性版はないのか?」と必ず尋ねられたものだ。17年たった今でも「30分で完了」することのメリットは男女ともに変わっていない。
コーチによる手厚いサポートが追加料金なしで受けられる
2つ目の理由は、コーチによる手厚いサポートが受けられる点。長野県在住の佐藤正治さん(64歳、仮名)は「妻から健康維持のためにジムに通うように勧められた。運動が苦手で最初はしんどかったが、コーチがマシンの使い方や目標設定を細かくアドバイスしてくれて続けられるようになった」と語る。
一般にスポーツジムでは、コーチによる個別指導は「パーソナルプログラム」などと呼ばれ、月会費とは別に料金がかかる。メンズ・カーブスの場合は、月会費のみで30分の間にコーチによる個別サポートが受けられる。
「セミパーソナル」と呼ぶこのサポートが利用者満足度の向上に貢献しており、業界でもトップクラスの退会率の低さにつながっている。
メンズ・カーブスでは12機種の筋トレマシンが足踏みボードを交互にはさんでサーキット状に並んでおり、一つの機種で30秒運動したら次の機種に移動する。これらのマシンや運動手順は実は女性用と全く同じだ。
このため、中には「女性用のマシンでは筋肉をどんどん鍛えたい男性には物足りないのでは」と疑問を持つ人もいるようだ。
カーブスのマシンは油圧駆動式のため、動かすスピードを速くするほど負荷が大きくなる。このため、マシン負荷を大きくしたい人も、そうでない人も、自分のペースで運動ができるようになっている。
運動不足解消と仲間づくりの場に
ユニークなのは男性がメンズ・カーブスに入会するきっかけだ。
男性会員の場合、既存のカーブスの会員である妻からの紹介というケースが多いそうだ。さらにメンズ・カーブスを気に入った男性会員による紹介で他の男性が会員になる例も多い。
一人で黙々と運動するのではなく、集団で体を動かすことのメリットもある。複数で協調的に運動することが、認知機能向上に効果があることがこれまで大学との研究で分かっている。
また会員同士が慣れると高校時代の部活のような、男同士の友情が生まれるコミュニティーができるとのことだ。
コロナ禍で外出が減った年配層には運動不足解消のほか、認知症予防と仲間づくりの場として有用だろう。