客層に応じたデジタルとアナログのバランスが重要

松屋_タッチパネル式券売機 ビジネス切り口別
松屋_タッチパネル式券売機

高齢者住宅新聞連載 村田裕之の「シニアビジネス相談室」第85回

最近、牛丼店に年配客や家族連れが目につくようになってきた

最近、松屋やすき家といった牛丼店に年輩客や家族連れが目につきます。以前はこうした牛丼店の主な客層は、20代から30代の独身男性でした。

ところが、近年の物価高で、従来ファミレスなどに行っていた客層が、より低価格と思われる牛丼店に移っているようなのです。(実は牛丼店でも商品によっては安くないものも増えているのですが)

上記の牛丼店は運営の効率化とコスト削減のために、店舗に注文用のタッチパネル式の券売機を導入し、店員の数を減らしています。

ところが、この券売機がわかりづらく、特に松屋のものはメニューが選びにくいことで有名です。

効率化のために導入したタッチパネル券売機が効率的でない

例えば、松屋でランチタイムに「牛めしランチセット」の並盛を券売機で選択した場合、セットメニューの味噌汁を「豚汁」に変更しようとしても、画面上に豚汁の選択肢が表示されません。

松屋の豚汁は具沢山で、コスパが良く、好きな人が多いため、上記の変更を望む客は多いと思います。

ところが、あれこれ探索しても選択方法がわからず、そのうちに後ろに行列ができてプレッシャーを感じ、仕方なく豚汁をあきらめて、味噌汁のままで注文完了—といったことが頻繁に起こります。

提供している商品メニューは豊富なのに、券売機の不備のために顧客に選択されにくい。この結果、券売機で選択されやすいメニューだけが注文され、それ以外のメニューは注文されません。顧客の不満がたまり、客離れが進むということが起きているのです。

𠮷野家は店舗に券売機を導入せず、店員に注文を頼むスタイル

一方、牛丼店老舗の𠮷野家は、店舗には券売機を導入せず、店員に注文を頼むスタイルです。

「いらっしゃいませ」「ご注文はお決まりですか?」「ありがとうございました」といったやりとりを、顧客一人ひとりの顔を見ながら行うのが吉野家創業時からの文化とのこと。

もちろん、吉野家でも無駄なコストの削減、店舗オペレーションの合理化は必要で不断の努力がなされていると思います。

物価高という「時代性の変化」が既存の客層を変えている

重要なのは、物価高という「時代性の変化」により、牛丼店において従来の若年層から年配層へと客層が変わっていることです。この変化に対応できるか否かが業績に大きな影響を及ぼすでしょう。

DX一辺倒ではなく、客層に応じたデジタルとアナログのバランスが重要なことをこの事例は示しています。

この記事を書いた人
村田 裕之

村田アソシエイツ株式会社代表取締役、東北大学加齢医学研究所スマート・エイジングセンター特任教授

日本の中高年向け事業開発プロデューサー、起業家、社会学者。専門は中高年を対象とした事業開発と消費行動分析、日本と諸外国の高齢社会研究、スマート・エイジング論など。

1999年に日本で初めて「アクティブシニア市場」の重要性を指摘し、情報武装した高齢者「スマートシニア」の出現を予言した。2004年に「シニアビジネス」という言葉を初めて公に提唱し、女性専用フィットネス「カーブス」の日本への紹介、NTTドコモ「らくらくホン」の商品開発支援、関西大学とのカレッジリンク型シニア住宅の創成など、950以上の企業の事業開発に携わっている。日本におけるシニアビジネス分野の第一人者として知られている。

2006年に東北大学からの依頼でスマート・エイジングのコンセプトを提唱し、2009年10月東北大学スマート・エイジング国際共同研究センターの設立に参画。スマート・エイジング・カレッジを11年間主宰し、市民の健康リテラシーの向上とのべ406社との産学連携を推進してきた。

シンガポールに拠点を置く Asia Pacific Eldercare Innovation Awardsにより2018年5月に「Global Ageing Influencers」に、2024年5月に「Super Ageing Japan Outstanding Entrepreneur(スーパー・エイジング・ジャパン卓越起業家)」に選ばれた。

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