シニア市場が伸び盛り 退職後の居場所広がる

国内動向

日本経済新聞夕刊 2015年11月4日 読み解き現代消費

日経夕刊2面の連載コラム「読み解き現代消費」に『シニア市場が伸び盛り 退職後の居場所広がる』を寄稿しました。

「読み解き現代消費」は、毎週水曜日、気になる消費トレンドについて、その背景などを読み解くコラムです。私も執筆者の一人に名を連ねており、一か月半に一度のペースで寄稿しています。以下に全文を掲載します。

退職者向けの「第三の場所」がじわじわ増えている

前橋市に住む小林和樹さん(65)は朝9時前に自宅を出る。しかし、行き先は会社ではない。自宅から車で10分ほどのカラオケ「まねきねこ」だ。朝9時から開店していて、午前中は小林さんのような退職者が大勢いる。飲み物や食べ物の持ち込みができるのもシニア層に人気の秘訣だ

ミヤマ

埼玉県朝霞市に住む佐野哲夫さん(66)の日課は、毎朝6時半からのラジオ体操。自宅そばの広場で開催するグループに参加している。終了後は近くの「ミヤマ珈琲」で朝食を取る。420円のコーヒーを頼むと厚切りトーストとゆで卵がついてくる。読み放題の新聞・雑誌で情報を仕入れ、体操仲間と情報を交換する。

小林さん、佐野さんの行きつけの場所の共通点は自宅(第一の場所)でも職場(第二の場所)でもない「第三の場所」。もともとは社会学者のレイ・オルデンバーグが提唱した概念だ。

筆者は11年前、「シニアビジネス」出版し(1)手ごろな価格でそれなりの食事や喫茶が楽しめる(2)新たな友人をつくるきっかけが多い(3)生活に役立つ情報が多く得られる(4)健康維持、教養・スキル向上のための機会が多い――の条件を満たす場所を退職者向けの第三の場所と再定義した。

社会のシニアシフトで第三の場所が事業機会となってきている

当時は退職者向けの第三の場所としては、老人クラブ、パチンコ屋、図書館程度しかなかった。退職すると、毎日定期的に行く所がなくなる人が多い。その受け皿としての第三の場所が事業機会となることを主張し続けてきた。

ここに来て選択の幅が増えてきた理由は何だろう。社会のシニアシフトが進み、シニアの存在感が目に見えて増してきたため、多くの企業がシニア客に目を向けるようになったからだ。

シニア市場は難しいというのは事業をやったことのない人の言葉だ。企業が本気で取り組めば市場は生まれる。新市場とは自らが創るもの、ということを改めて認識したい。

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