高齢者住宅新聞 1月27日号
高齢者住宅新聞のトップ挨拶に年頭所感が掲載されました。250字以内という制限がありましたので、要点のみ書きました。
日本の介護業界の優位性と特殊性
ここ数年、海外からの取材、講演依頼、コンサルティング依頼が増えています。特にアジアへの渡航回数が増えており、今月は正月明けに中国・上海に行ってきました。今週末には香港に行きます。
海外諸国とのやりとりを通じて感じるのは、日本の介護業界の優位性と特殊性です。その源は公的介護保険制度の存在です。
2000年4月から導入された公的介護保険制度のおかげで、それまでアンダーグラウンドだった介護業界に民間の異業種企業が多数参入し、初めてサービス産業としての体裁が形作られてきました。
一方、事業収入のかなりの部分を保険報酬に依存する産業構造のため、サービスの質をそれほど上げなくても収益が確保できてしまうことから、100%自費負担の商品・サービスの産業に比べて競争力が高くありません。
特に海外から日本の介護産業を眺めると、このことを感じます。アジアでは日本以外のほとんどの国には公的介護保険がなく、利用者のほとんどが自費負担です。
政府の規制の強い産業は、国際競争力がない
要するに政府の規制の強い産業は、かつてのエネルギー産業や金融業、従来の農業と同様、国際競争力がないのです。規制の傘の下に守られると、産業としてスポイルされるのです。
現状では高齢化率の高い日本が、まだ先行できていますが、今後このままのスポイル状態が続くと、10年後にはアジア諸国に負けてしまうのではないかと危惧します。
そんな思いを250字にまとめたのが、今回の年頭所感です。
年頭所感(原文)
今年は介護保険に頼らないシニアビジネス開拓が一層重要です。昨年4月の介護保険制度改正で介護報酬が減額になり、保険制度に依存した事業の先行きが危ぶまれています。
15年5月現在、65歳以上の介護保険利用者は615万人。一方、非利用者は2,740万人で利用者の4.5倍。市場規模は介護保険外の方が遥かに大きい。
海外では特にアジアでシニア市場が拡大しています。しかし、アジアでは韓国を除いて日本のような公的介護保険制度は存在しません。日本の事業者が優位に立つためには、介護保険制度に頼らないシニアビジネスが不可欠です。